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医療広告・集患

医療広告ガイドラインの要点 ― 規制対象(誘引性・特定性)・広告可能事項の限定列挙・禁止される広告・違反時の措置

「ホームページに書いてよいことと書けないことの線引きが分からない」「広告代理店に任せているが、最終的な責任は院長にあると聞いて不安になった」。病院・クリニック・歯科医院の院長や広報担当の方から、当事務所にはこうしたご相談が多く寄せられます。この記事では、医療法6条の5と医療広告ガイドライン(2026年3月の改正で「医療広告等ガイドライン」に名称変更)を軸に、何が「広告」として規制されるのか、禁止される広告と広告可能事項の限定列挙はどう整理されているのか、違反したときに何が起きるのかを条文に沿って整理します。

この記事の結論

医療機関の情報発信は、「誘引性」「特定性」「医業等に関する内容」の3要件を満たせばウェブサイトやSNSを含めて医療法上の「広告」となり、虚偽・比較優良・誇大・公序良俗違反・体験談・誤認させる治療前後の写真が禁止されるうえ、医療法6条の5第3項に列挙された事項しか原則として広告できません。根拠は医療法6条の5・6条の8、医療法施行規則1条の9・1条の9の2と、2026年3月30日最終改正の医療広告等ガイドラインです。

医療広告ガイドラインとは ― 医療法6条の5と2026年3月の最終改正

医療広告の規制は、法律・省令・告示・通知の4層でできています。土台は医療法6条の5で、1項が虚偽広告の禁止、2項が比較優良広告・誇大広告・公序良俗に反する広告の禁止と省令基準への適合義務、3項が広告できる事項の限定列挙です。2項の省令基準は医療法施行規則1条の9(体験談と、誤認させるおそれのある治療前後の写真等の禁止)、3項の例外は同規則1条の9の2(限定解除の要件)に置かれ、広告可能な治療方法や資格名の細目は厚生労働省告示(平成19年厚生労働省告示第108号、広告告示)が定めています。

これらの解釈運用を示すのが、厚生労働省医政局長通知の別紙「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」です。2018年6月1日施行の医療法改正で規制対象が「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に広げられ、医療機関のウェブサイトも対象になりました。直近では、令和7年法律第87号により2026年4月1日からオンライン診療が医療法に定義され「オンライン診療受診施設」の広告規制が新設されたことに伴い、2026年3月30日付けで指針が改正されて名称が「医療広告等ガイドライン」に変わり、Q&Aと「ウェブサイト等の事例解説書(第6版)」も同日付けで更新されています。

ポイント

医療は生命・身体に関わり、受け手が文言から質を判断しにくいため、医療広告は「限定的に認められた事項以外は原則禁止」という一般の商品・サービスとは逆向きの設計です。「書いてはいけないことを避ける」だけでは足りず、「書いてよいと認められた事項の中で書く」必要があります。

規制の対象 ― 「広告」に当たる3要件と対象媒体・対象者

ガイドライン第2は、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)、②医業・歯科医業を提供する者の氏名・名称または病院・診療所・オンライン診療受診施設の名称が特定可能であること(特定性)、③医業・歯科医業または病院・診療所に関する内容であること、の3要件をすべて満たすものを医療広告と判断するとしています。

対象媒体は、チラシ・看板・新聞・放送のほか、ウェブサイト、SNSの投稿、動画、バナー広告、検索連動型(リスティング)広告、QRコードから表示されるページ、患者の希望で配布するメールマガジン、会員限定ページまで含まれます(Q&A Q1-7〜Q1-11)。一方、学術論文、費用負担のない新聞・雑誌の記事、患者等が自らの意思で掲載する体験談、院内掲示・院内配布のパンフレット、職員の求人広告は、通常は誘引性がなく広告と見なされません。ただし、費用を負担して掲載を依頼した記事風広告や、医療機関の依頼・謝礼に基づく体験談は実質的に広告として扱われます。

規制の対象者は「何人も」です。医療機関だけでなく、広告代理店、サイト運営会社、アフィリエイター、患者や一般人も含まれ、代理店や媒体社は違反があれば広告依頼者とともに指導等の対象になり得ます(第2の6、Q5-2)。「制作会社に任せていた」という事情は、医療機関側の責任を軽くする理由にはなりません。

禁止される広告 ― 虚偽・比較優良・誇大・公序良俗・体験談・ビフォーアフター

医療広告に当たる場合、まず次の6類型が禁止されます。虚偽広告は直接罰の対象で、他の5類型は後述の中止命令・是正命令を経て罰則につながります。

類型根拠ガイドライン・Q&Aが挙げる具体例
虚偽広告法6条の5第1項「絶対に安全な手術です」「どんなに難しい症例でも必ず成功します」、根拠・調査方法を示さない「満足度△%」、加工・修正した術前術後の写真
比較優良広告法6条の5第2項1号「日本一」「No.1」「最高」「最良」などの最上級表現(事実であっても禁止)、「著名人も当院で治療を受けています」
誇大広告法6条の5第2項2号「最先端」「最適」、小さな注釈付きの「1か所△万円」(実際は複数か所同時実施時の価格)、活動実態のない団体の認定、「比較的安全な手術」
公序良俗に反する広告法6条の5第2項3号わいせつ・残虐な図画や映像、差別を助長する表現
体験談の広告法6条の5第2項4号、規則1条の9第1号患者等の主観や伝聞に基づく治療内容・効果の体験談。口コミサイトからの転載・抜粋、スタッフが代筆したものも同じ
誤認させる治療前後の写真等法6条の5第2項4号、規則1条の9第2号説明が不十分なビフォーアフター写真。術前のみ・術後のみも同様(Q2-8)。治療内容・費用・主なリスク・副作用等の詳細な説明を付せば該当しない

誇大広告は、一般人が受ける「印象」や「期待感」と実際の内容に相違があると常識的に言えれば足り、実際に誤認した結果までは必要とされません。また、禁止類型に当たらなくても、「今なら△円でキャンペーン実施中」「期間限定で50%オフ」のように費用を強調した広告や、「無料相談をされた方全員にプレゼント」のように医療の内容と関係ない事項で誘引する広告は、品位を損ねるものとして「厳に慎むべき」とされています(第3-1の1(8))。

ポイント

比較優良広告は「客観的な事実であっても禁止」が原則です。自院の特徴は、他院との優劣ではなく、手術件数(期間併記・公表要件あり)や設備・人員といった広告可能事項の範囲で事実をそのまま書く形に置き換えます。

広告可能事項の限定列挙 ― 医療法6条の5第3項の16項目

医療法6条の5第3項は、限定解除の場合を除き、同項に掲げる事項以外の広告を禁じています。2026年4月1日施行の改正でオンライン診療受診施設に関する15号が加わり、現在は16項目です。個別の事項を列記するのではなく「△△に関する事項」という項目群でまとめる包括規定方式が採られています。

号広告可能事項実務上の注意(ガイドライン第3-2)
1号〜4号医師・歯科医師である旨、診療科名、名称・電話番号・所在地・管理者氏名、診療日・診療時間・予約の有無診療科名は医療法施行令3条の2に定めるものに限る。「審美歯科」「インプラント科」など法令に根拠のない名称は不可
5号〜7号法令上の指定(保険医療機関等)、医師少数区域経験認定医師、地域医療連携推進法人の参加病院等学会の研修施設である旨は法令上の指定ではなく不可(Q2-19)
8号・9号施設・設備・従業者に関する事項、医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴・専門性資格医療機器は一般的名称(MRI、CT等)で示し販売名・型式番号は出さない。専門医は認定団体を明記し、単に「△△専門医」は誇大広告
10号〜12号管理・運営に関する事項、他機関との連携、医療に関する情報提供「万全の安全管理体制」など客観的に評価できない表現は誇大広告
13号提供される医療の内容(治療方法は広告告示で定める保険診療、評価療養等、分娩、一定の自由診療に限る)自由診療は「公的医療保険が適用されない旨」と「標準的な費用」の併記が条件。治癒率・成功率などの効果は書けない
14号医療の提供の結果(手術件数、分娩件数、平均在院日数、患者数、病床利用率など)期間を暦月単位で併記し、ウェブサイトや年報で検証可能にする。死亡率・治癒率は不可
15号・16号オンライン診療受診施設を利用したオンライン診療を行う旨、その他告示で定める事項(健康診査、予防接種、治験、支払方法、対応言語など)予防接種はワクチンの商品名を出さない

広告可能事項は写真・映像・音声でも表現でき、分かりやすい言い換えや説明を加えることも認められます。ただし、治療の効果や成功率は13号・14号のいずれにも含まれないため、限定解除の要件を満たさない広告では一切書けないという点が最も見落とされやすい部分です。

広告可能事項の限定解除 ― ウェブサイト等に認められる例外の概要

医療法施行規則1条の9の2は、①患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること、②問い合わせ先の記載などにより容易に照会できるようにすること、③自由診療について通常必要とされる治療内容・費用等を情報提供すること、④自由診療について主なリスク・副作用等を情報提供すること、の4要件をすべて満たす場合に限定を解除すると定めています(③④は自由診療の情報を提供する場合のみ)。

ウェブサイトのほか、メールマガジンや患者の求めに応じて送るパンフレットは①に該当し得ますが、バナー広告や検索サイトでスポンサーとして表示されるリスティング広告は①を満たさず、広告可能事項以外は書けません(Q1-7、事例解説書(36)(37))。また、限定解除ができても虚偽・比較優良・誇大・体験談・誤認させる治療前後の写真の禁止は解除されません(第3-3の1)。限定解除は「書ける範囲が広がる」仕組みであり、「禁止表現が許される」仕組みではありません。

違反したときの流れ ― 行政指導から報告命令・是正命令・罰則まで

執行は都道府県知事、保健所設置市の市長、特別区の区長が担います。通報や厚生労働省委託事業の医療機関ネットパトロールで違反の疑いが見つかった後の手順は、ガイドライン第5で次のように示されています。

段階内容根拠
1. 任意の調査・行政指導説明を求め、違反があれば広告の中止・是正、広告物の回収・廃棄を指導。代理店・媒体社にも指導ガイドライン第5の4(2)ア
2. 報告命令・立入検査任意の調査に応じない場合等に報告を命じ、事務所に立ち入って広告物・契約書・診療録等を検査法6条の8第1項
3. 中止命令・是正命令行政指導に従わない場合や違反を繰り返す場合、期限を定めて命令。事前に弁明の機会の付与法6条の8第2項、行政手続法13条
4. 告発・罰則虚偽広告(直接罰)、中止命令・是正命令違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。報告を怠る・虚偽報告・立入検査の拒否は20万円以下の罰金。法人にも罰金法87条1号・3号、89条2号、90条
5. 行政処分・公表悪質な場合は管理者変更命令、開設許可の取消し・閉鎖命令も可能。命令や告発を行った際は原則として公表法28条、29条1項5号、ガイドライン第5の4(4)

さらに、虚偽・誇大広告は景品表示法5条の不当表示に同時に違反する可能性が「非常に強い」とガイドラインは述べており、医療法の指導を受けたからといって景品表示法の措置命令や課徴金が免除されるわけではありません。最初の連絡は保健所等からの任意の照会として届くことが多く、この段階で速やかに表示を止め、根拠資料を揃えて誠実に対応すれば、命令や公表に至る前に収束することがほとんどです。

院内で広告をチェックする体制のつくり方

ガイドラインは、広告を行う者の責務として客観的で正確な情報の伝達と、医療機関が「自らの意思により行う」ことを求めています。制作会社任せにせず、公開前に院内で確認する最小限の仕組みは次のとおりです。

  • 媒体の棚卸し:ウェブサイト、SNS(個人名のものも含む)、動画、リスティング・バナー広告を一覧にし、「広告可能事項の範囲で書く媒体」か「限定解除要件を満たして書く媒体」かを決める
  • 公開前の二重確認と根拠資料の保管:作成者以外の1名が禁止6類型・広告可能事項・限定解除要件をページ単位で確認し、手術件数や人員数などの数値は集計期間・算定方法・公表場所をセットで保管する
  • 委託先との契約:代理店・制作会社との契約書に、医療法・ガイドラインの遵守、公開前の医療機関側の承認、違反指摘時の修正対応、口コミ・体験談の投稿依頼を行わないことを明記する

ガイドライン・Q&A・事例解説書は3月前後に改正されることが多いため、年次点検も組み込んでください。当事務所には医師免許と弁護士資格を併せ持つ弁護士が在籍し、医学的な表現の妥当性と法令上の可否を一体で確認できます。企業法務の弁護士チームが、チャット・オンラインで全国の医療機関を支援しています。

よくある質問(FAQ)

医療広告ガイドラインの最新版はいつのもので、どこで確認できますか?
現行版は2026年3月30日最終改正の「医療広告等ガイドライン」で、厚生労働省の「医療法における病院等の広告規制について」のページに本文、Q&A、ウェブサイト等の事例解説書(第6版)が掲載されています。2026年4月1日施行の医療法改正でオンライン診療受診施設に関する広告規制が加わったことに伴う改正で、名称に「等」が付きました。
クリニックの公式ホームページやSNSは医療法の「広告」に当たりますか?
誘引性と特定性があり医業に関する内容であれば、ウェブサイト、SNSの投稿、動画、メールマガジンも広告として規制の対象です。ただし患者等が自ら求めて入手する情報であるため、問い合わせ先の明示などの限定解除要件を満たせば広告可能事項以外の内容も掲載できます。虚偽・誇大・比較優良・体験談などの禁止事項は限定解除をしても解除されません。
「地域No.1」「最新の治療」という表現は使えますか?
「No.1」「日本一」「最高」などの最上級表現は、事実であっても比較優良広告として禁止されます。「最新」は医学的・社会的常識の範囲で事実と認められれば必ずしも禁止されませんが、より新しい治療法や機器が定着した後も使い続けると虚偽・誇大広告に当たるおそれがあり、求められれば根拠を示す必要があります。「最先端」「最適」は誇大広告として広告できません。
広告代理店や制作会社が作った広告で違反があった場合、責任は誰にありますか?
医療法6条の5は「何人も」を対象としており、医療機関だけでなく広告代理店、サイト運営会社、アフィリエイターも指導や命令、罰則の対象になり得ます。もっとも、報告命令や是正命令の名宛人は病院・診療所の場合は開設者または管理者であり、医療機関側の責任が外部委託によって免除されることはありません。
保健所から広告について問い合わせが来ました。どう対応すべきですか?
多くは任意の調査・行政指導の段階ですので、指摘された表示を速やかに停止または修正し、作成経緯や根拠資料を整理して誠実に説明することが重要です。任意の調査に応じない場合は医療法6条の8第1項の報告命令・立入検査、行政指導に従わない場合は同条2項の中止命令・是正命令に進み、命令違反には罰則と公表があります。対応方針に迷う場合は、回答前に弁護士に相談してください。

まとめ

  • 医療広告の規制は医療法6条の5を土台に、施行規則1条の9・1条の9の2、広告告示、医療広告等ガイドライン(2026年3月30日最終改正)の4層で構成され、ウェブサイト・SNS・動画も「誘引性・特定性・内容」の3要件で広告に該当する
  • 虚偽・比較優良・誇大・公序良俗違反・体験談・誤認させる治療前後の写真の6類型は禁止され、限定解除をしても解除されない
  • 広告できる事項は6条の5第3項の16項目に限定され、治療の効果・成功率は限定解除の要件を満たさない広告では書けない
  • 違反は任意調査・行政指導から報告命令・立入検査、中止命令・是正命令、罰則、公表へと進み、景品表示法も重畳的に適用される
  • 媒体の棚卸し、公開前の二重確認、根拠資料の保管、委託先との契約条項、年次点検で院内体制を整える

医療広告は、一度の違反公表が集患と信用に長く影響する一方、ルールの構造を理解すれば安全に情報発信の幅を広げられる分野です。ウェブサイトやSNSの日常的なチェック、保健所からの照会対応、広告代理店との契約整備まで継続的に任せたい医療機関には顧問弁護士サービスを、個別のページや広告案の確認についてはお問い合わせ(無料相談)をご利用ください。関連する分野の記事は医療広告・集患の分野ページにまとめています。

参考(一次情報)
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この記事の執筆者
弁護士・医師 澄川 淳矢弁護士法人 越水法律事務所 弁護士・医師(第一東京弁護士会)

京都大学医学部卒業、倉敷中央病院での初期研修を修了した医師であり、弁護士。医療現場での経験を背景に、病院・クリニック・介護事業者・医薬品・医療機器・ヘルステック企業の法務について、医療の実態を踏まえた実践的な助言を行う。

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越水 遥
この記事の監修者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。医療機関・ヘルスケア企業の顧問として、経営の視点を踏まえた法務支援を行う。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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