ホーム分野別記事一覧顧問弁護士サービス弁護士紹介YouTubeメルマガお問い合わせ
メルマガ登録(無料) 無料相談・お問い合わせ 電話 03-6824-4639(平日10:30–17:00)
介護・福祉事業

介護事業の指定と運営基準の基本 ― 6年更新、人員・設備・運営基準、加算要件の記録、基準違反の報酬返還と指定取消

「指定の更新前に人員基準を満たしているか不安」「加算の要件不備を運営指導で指摘されないか」――介護事業者からこうしたご相談が寄せられます。介護保険の指定は、6年ごとの更新、人員・設備・運営基準の継続的な遵守、加算要件の記録による裏付けが求められ、基準違反は報酬返還や指定取消に直結します。この記事では、介護保険法と運営基準(厚生労働省令)の条文に沿って、指定と運営基準・加算要件の基本、基準違反の効果、法人として整えるべき体制を整理します。

この記事の結論

介護事業の指定は事業所・サービス種類ごとに受け、6年ごとの更新を受けなければ失効します(介護保険法70条・70条の2)。人員・設備・運営基準は条例と厚生労働省令で定められ、違反は勧告・命令・公表(76条の2)、不正請求には返還額に40%を加えた徴収(22条3項)、指定の効力停止・取消(77条)につながるため、加算要件を含め「記録で証明できる運営」を整えることが経営上の防御になります。

介護事業の「指定」とは ― 事業所ごとの指定と6年更新

介護保険の給付費を受け取れるのは、都道府県知事等の「指定」を受けた事業者だけです。指定は、申請により、居宅サービスの種類と事業所ごとに行われます(介護保険法70条1項)。指定はサービス種類ごと・事業所ごとに別々に存在し、更新や処分もその単位で動きます。地域密着型サービスは市町村長の指定です(78条の2第1項)。

欠格事由は、申請者が条例で定める者(原則として法人)でないとき、人員が基準を満たさないとき、適正な運営ができないと認められるとき、拘禁刑以上の刑や保健医療・福祉・労働に関する法律による罰金刑の執行を終えていないとき、過去5年以内に指定を取り消されたときなどです(70条2項各号)。労働関係法令の罰金刑が含まれる点は、労務管理の不備が指定に影響することを意味します。

6年ごとの更新と変更届の期限

指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います(70条の2第1項)。期限内に更新申請をしていれば、処分がされるまで従前の指定が効力を持ちます(同条2項)。更新時にも欠格事由が審査されるため、満了日を法人で一覧管理し、人員配置や設備の現状が申請書類と一致しているかを更新前に点検してください。事業所の名称・所在地その他省令で定める事項の変更や休止後の再開は10日以内、廃止・休止は1か月前までの届出が必要です(75条)。管理者の交代や運営規程の変更の届出漏れは、運営指導で指摘される典型例です。

人員基準・設備基準・運営基準 ― 3つの基準の法的な位置づけ

指定事業者は、事業所ごとに都道府県の条例で定める基準に従い、条例で定める員数の従業者を置かなければならず、設備と運営の基準も条例で定められます(74条1項・2項)。条例は、人員や利用者の処遇・安全確保に密接に関連する事項は厚生労働省令に「従い」、その他は省令を「標準」「参酌」として定められます(同条3項)。実務上は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)等の省令が条例を通じて適用されていると理解したうえで、所在地の条例の上乗せを確認します。

基準の種類主な内容違反した場合の主な効果(介護保険法)
人員基準管理者、サービス提供責任者、介護・看護職員等の資格と員数勧告・命令(76条の2第1項2号)、満たせなくなったときは指定の効力停止・取消(77条1項3号)
設備基準事業所の区画、必要な設備・備品、居室の面積等勧告・命令(76条の2第1項3号)、指定の効力停止・取消(77条1項4号)
運営基準重要事項説明と同意、計画、記録、秘密保持、苦情処理、事故対応、虐待防止、身体的拘束等の禁止、業務継続計画など勧告・命令・公表(76条の2)、指定の効力停止・取消(77条1項4号)、人格尊重義務違反(74条6項・77条1項5号)
報酬算定基準(加算要件)各加算の体制要件・実績要件・記録要件(告示・留意事項通知)単なる誤りは過誤調整の指導、偽って請求した場合は返還額+40%の徴収(22条3項)と指定取消(77条1項6号)

74条6項は要介護者の人格尊重と法令遵守・忠実な職務遂行を義務付けており、高齢者虐待や不適切な身体拘束はこの義務違反としてそれ自体が指定取消の事由になります(77条1項5号)。

運営基準で特に確認される項目 ― 説明同意・記録・虐待防止・事故対応

運営指導で確認される頻度が高い項目を、訪問介護の基準(平成11年厚生省令第37号)を例に挙げます。

  • 内容及び手続の説明及び同意(8条):提供開始前に運営規程の概要、勤務体制その他の重要事項を記した文書を交付して説明し、利用申込者の同意を得る。
  • サービス提供の記録(19条)・訪問介護計画(24条):提供日・内容等を記録し、計画は説明と同意を経て交付し、実施状況を把握する。
  • 身体的拘束等の禁止と記録(23条3号・4号):生命・身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録。2024年度の基準改正で訪問系・通所系にも明記。
  • 事故発生時の対応(37条):市町村・家族・居宅介護支援事業者等への連絡、必要な措置、記録、賠償すべき事故への速やかな損害賠償。
  • 虐待の防止(37条の2):対策を検討する委員会の定期開催と周知、指針の整備、定期的な研修、担当者の設置。
  • 記録の整備(39条):計画、提供記録、身体的拘束等・苦情・事故の記録等を完結の日から2年間保存。条例で5年等に延長する自治体もある。
ポイント

運営基準違反の多くは「やっていない」ではなく「やったが記録がない」「同意の署名がない」という形で指摘されます。基準ごとに、どの文書で遵守を証明するかを決めておくことが実務の要です。

加算の算定要件と記録 ― 「取れる」ではなく「証明できる」か

加算は、人員配置、研修、会議、計画書などの要件を満たした場合に算定でき、細部は告示と留意事項通知で示されます。2024年度(令和6年度)介護報酬改定は全体で+1.59%(うち介護職員の処遇改善分+0.98%)とされ、多くのサービスで2024年4月1日、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーションは同年6月1日に施行されました。

厚生労働省の運営指導マニュアルは、要件の誤った理解により要件を一つでも満たしていなかった場合は自己点検のうえ過誤調整を指導するとしています。一方、人員不足を満たしていると装って請求するなど「偽りその他不正の行為」による請求は不正請求となり、立入検査を伴う監査に切り替えて事実関係が確認されます。分かれ目は、不備の認識と、記録が実態と一致しているかです。

算定要件を証明する記録の例

  • 体制要件:勤務形態一覧表、資格証の写し、雇用契約書、研修修了証
  • 実績要件:サービス提供記録、会議の議事録と出席者、計画書と同意の記録、評価・モニタリングの記録
  • 届出要件:体制届の控えと受理日、要件を満たさなくなった場合の届出。利用者への説明と同意の記録

厚生労働省の「各種加算等自己点検シート」を使い、職員の退職や配置変更のたびに点検する運用が現実的です。

基準違反の効果 ― 勧告・命令・公表、報酬返還、指定の効力停止・取消

段階内容根拠条文
運営指導(行政指導)改善を要する事項を文書で通知し、改善報告を求める。加算の誤りは自己点検と過誤調整を指導介護保険法23条・24条、介護保険施設等指導指針
勧告・公表基準に従っていない場合に期限を定めて勧告。期限内に従わないときは公表できる76条の2第1項・2項
命令・公示正当な理由なく勧告に従わないときに命令。命令したときは公示76条の2第3項・4項
報酬の返還と加算金偽りその他不正の行為により支払を受けたときは、返還額に40%を乗じた額を加えて徴収できる22条3項
指定の効力停止・取消人員基準を満たせない、運営基準に従った運営ができない、人格尊重義務違反、不正請求、報告拒否・虚偽報告、検査拒否、不正手段による指定など77条1項各号

77条1項の取消事由には、不正請求(6号)だけでなく、報告・帳簿書類の提出命令に従わない、虚偽の報告をした(7号)、出頭要求に応じない、答弁しない、検査を拒み妨げた(8号)という手続上の対応も含まれます。監査で不利な事実を隠す行為自体が取消事由になる構造です。指定取消等の処分には行政手続法に基づく聴聞または弁明の機会が付与されるため、その段階で弁護士が事実関係と基準の解釈を整理した意見書を提出することで、処分の内容や範囲が変わる余地があります。

連座制と業務管理体制 ― 複数事業所を運営する法人のリスク

指定を取り消された者は、取消しの日から5年間、新たな指定を受けられません。法人が取り消された場合、処分の通知日前60日以内にその法人の役員等(名称を問わず同等以上の支配力を有する者や事業所の管理者を含む)であった者も5年間指定を受けられず(70条2項6号)、親会社等の密接な関係を有する法人が取消しから5年を経過していない場合も欠格事由です(同項6号の3)。一つの事業所の不正がグループ全体に波及する「連座制」です。ただし、取消しの理由となった事実と、その発生を防止するための業務管理体制の整備の取組状況その他の責任の程度を考慮して相当と認められる場合は除かれます(各号ただし書)。

この「業務管理体制の整備」は、介護保険法115条の32で全ての介護サービス事業者に義務付けられ、届出も必要です。指定・許可を受けた事業所・施設の数が1以上20未満の事業者は法令遵守責任者の選任、20以上100未満は加えて法令遵守規程の整備、100以上はさらに業務執行状況の定期的な監査が求められます(介護保険法施行規則140条の39)。

ポイント

法令遵守責任者を形式的に置くだけでなく、事業所横断で基準遵守と加算要件を点検する仕組みを文書化し実際に動かしていることが、連座の例外を主張する根拠にもなります。

日常の体制整備チェックリスト

  • 指定の有効期間満了日と更新申請時期を法人で一覧管理しているか(70条の2)
  • 変更届の対象事項を把握し、10日以内の届出が運用されているか(75条1項)
  • 重要事項説明書・契約書が最新の運営規程・加算・料金と一致し、全利用者分の同意がそろっているか
  • 算定中の加算ごとに要件と証明文書を一覧化し、職員の異動時に再点検しているか
  • 法令遵守責任者の選任と業務管理体制の届出が現状と一致しているか(115条の32)
  • 2027年4月施行の改正介護保険法への準備が始まっているか(関連記事:2027年施行・改正介護保険法への実務対応)

医療法人との関係整理は医療法人の設立・分院展開で押さえておきたい法務のポイントも参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

介護事業の指定の有効期間は何年ですか。更新を忘れるとどうなりますか。
指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います(介護保険法70条の2第1項)。期限内に更新申請をしていれば、処分がされるまで従前の指定は有効です(同条2項)。
人員基準を一時的に満たせなくなった場合、すぐに指定が取り消されますか。
通常はまず勧告(76条の2第1項2号)と改善報告の求めがあり、従わない場合に命令へ進みます。取消事由にも該当します(77条1項3号)が、速やかに補充計画を示し、該当期間の報酬を自己点検して過誤調整すれば処分に至らないことが多いと考えられます。欠員を隠さず自治体へ相談することが重要です。
加算の要件を満たしていないことに後から気づきました。どうすればよいですか。
要件の誤った理解による算定は、運営指導マニュアル上、自己点検のうえ過誤調整を行うよう指導される扱いです。気づいた後も請求を続けると「偽りその他不正の行為」と評価され、返還額に40%を加えた徴収(22条3項)や指定取消(77条1項6号)のリスクが生じます。速やかに範囲を特定し、保険者に相談してください。
運営基準の記録は何年保存すればよいですか。
厚生労働省令では、計画、サービス提供記録、身体的拘束等の記録、事故・苦情の記録などを完結の日から2年間保存することとされています(平成11年厚生省令第37号39条2項)。条例で5年などに延長している自治体があるため、所在地の条例を確認してください。
役員の一人が過去に他法人で指定取消を受けていると、新規指定に影響しますか。
影響し得ます。取消処分の通知日前60日以内にその法人の役員等であった者は5年間指定を受けられず、そのような者が役員等にいる法人も指定を受けられません(介護保険法70条2項6号・10号)。新規指定や更新の前に役員・管理者の経歴を確認してください。

まとめ

  • 指定はサービス種類・事業所ごとに受け、6年ごとの更新が必要(70条・70条の2)。変更届は10日以内、廃止・休止は1か月前(75条)。
  • 人員・設備・運営基準は条例と厚生労働省令で定められ、説明同意、記録、身体的拘束等の禁止、事故対応、虐待防止が重点確認項目。
  • 加算は要件を「証明できる記録」が問われる。誤りは過誤調整、偽れば返還額+40%の徴収(22条3項)と指定取消(77条1項6号)。
  • 違反は勧告・公表・命令(76条の2)から指定取消(77条)へ進み、取消は役員等・関係法人に5年の連座が及ぶ(70条2項6号)。
  • 業務管理体制(115条の32)を実質的に機能させることが、違反の予防と連座の例外主張の両面で法人を守る。

当事務所は、医師免許と弁護士資格を併せ持つ弁護士を含む企業法務の弁護士チームとして、介護事業者の指定・更新の点検、運営基準・加算要件の整備、運営指導・監査対応、行政処分に対する意見書作成までを継続的に支援しています。顧問弁護士サービスをご覧いただき、「更新前に点検したい」「加算に不安がある」段階のご相談はお問い合わせ(無料相談)からご連絡ください。チャット・オンラインで全国に対応しています。関連記事は介護・福祉事業の記事一覧をご覧ください。

参考(一次情報)
関連記事・関連ページ
この記事の執筆者
弁護士・医師 澄川 淳矢弁護士法人 越水法律事務所 弁護士・医師(第一東京弁護士会)

京都大学医学部卒業、倉敷中央病院での初期研修を修了した医師であり、弁護士。医療現場での経験を背景に、病院・クリニック・介護事業者・医薬品・医療機器・ヘルステック企業の法務について、医療の実態を踏まえた実践的な助言を行う。

弁護士紹介を見る →
越水 遥
この記事の監修者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。医療機関・ヘルスケア企業の顧問として、経営の視点を踏まえた法務支援を行う。

弁護士紹介を見る →

※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

← 記事一覧へ戻る毎日の記事をメールで受け取る

医療・ヘルスケアの法務、
まずは無料相談からお聞かせください。

医療法・薬機法・介護保険法・医療広告・労務。病院・クリニック、介護事業者、医薬品・医療機器・化粧品・健康食品メーカー、ヘルステック企業の課題を伺い、優先して整えるべき事項と顧問契約の内容をご提案します。東京のオフィスでの面談のほか、オンラインで全国に対応しています。

お電話(平日 10:30–17:00)
03-6824-4639

✉ メルマガ登録 無料相談