「この製品は薬機法上の医療機器に当たるのか」「健康機器として売るなら、どこまでの表現が許されるのか」「製造販売業・製造業・販売業の許可はどれが必要か」――医療機器や医薬品の開発・輸入販売を始める企業から、当事務所に最も多く寄せられる質問です。この記事では、医療機器・医薬品の該当性の判断基準、業許可の種類、置くべき責任者を、薬機法の条文と厚生労働省・PMDAの公的資料に沿って整理します。
医療機器・医薬品への該当性は製品の構造ではなく、表示・広告から読み取れる「使用目的」(疾病の診断・治療・予防、身体の構造・機能への影響)で決まり、該当すれば製造販売業の許可(薬機法12条・23条の2)と品目ごとの承認・認証・届出の両方が必要です。業許可は製造販売業・製造業・販売業の3層で、医療機器のクラス分類と医薬品の区分により必要な許可の種類と責任者が変わります。
薬機法2条の定義 ― 使用目的で決まる医薬品・医療機器の範囲
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)2条の定義は、いずれも製品の構造ではなく「何を目的として使用されるか」で書かれています。これが該当性判断の出発点です。
- 医薬品(2条1項):日本薬局方に収められている物のほか、疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている物で、機械器具等でないもの。
- 医療機器(2条4項):疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等で、政令で定めるもの。
「機械器具等」にはプログラムとその記録媒体が含まれ(2条1項2号)、法律上の「物」はプログラムを含みます(2条19項)。医療機器の「政令で定めるもの」は薬機法施行令別表第一に類別として列挙され、機械器具84類別(体温計、注射針、補聴器、バイブレーター、家庭用電気治療器、磁気治療器など)、医療用品、歯科材料、衛生用品、疾病診断用・治療用・予防用プログラムが並びます。
また、2条13項は、自ら製造(委託製造を含み、受託製造を除く)または輸入した製品を販売・貸与・授与することを「製造販売」と定めています。海外製品を輸入して国内で売る会社は、工場を持たなくても承認・許可の主体である製造販売業者になります。
医療機器のクラス分類と承認・認証・届出の対応
医療機器は、不具合が生じた場合の人体へのリスクに応じて、高度管理医療機器(生命・健康に重大な影響を与えるおそれ)、管理医療機器(影響を与えるおそれ)、一般医療機器(影響を与えるおそれがほとんどない)に区分され、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定します(2条5項〜7項)。保守点検に専門知識を要する特定保守管理医療機器(2条8項)は、これと別の横断的な区分です。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の資料では、国際的なクラス分類と次のように対応させています。
| クラス | 区分 | 品目ごとの手続 | 代表例(PMDA資料) | 製造販売業許可 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 一般医療機器 | 製造販売の届出(23条の2の12)。自己認証でPMDAの審査はない | メス、ピンセット、医療ガーゼ | 第三種 |
| Ⅱ | 管理医療機器 | 認証基準があれば登録認証機関の認証(23条の2の23)。基準から外れれば厚生労働大臣の承認 | MRI装置ワークステーション、超音波血流計 | 第二種 |
| Ⅲ・Ⅳ | 高度管理医療機器 | 厚生労働大臣の承認(23条の2の5。PMDAが審査)。認証基準のある一部品目は認証 | 人工関節(Ⅲ)、冠動脈ステント、植込み型心臓ペースメーカ(Ⅳ) | 第一種 |
クラス分類は、製造販売業許可の種類、販売業の許可・届出の要否、製造販売後安全管理の体制(GVP省令の第一種〜第三種製造販売業者)まで連動して決めます。一般的名称とクラスはPMDAの全般相談(無料)で確認できます。
該当性とクラス分類は、承認・認証・届出のルート、業許可の種類、販売段階の規制を一度に決める「上流の判断」です。製品コンセプトの段階で確定させないと、後工程の計画がすべて組み直しになります。
雑品・健康機器・健康食品・アプリとの線引きと相談先
医療機器と健康機器・雑品
同じ構造の装置でも、「血行を促進する」「こりを治療する」など身体の機能への影響や治療を標榜すれば医療機器の使用目的があると評価され得ますし、リラクゼーションや美容にとどまれば非該当と整理される場合があります。判断の対象はウェブサイト、パッケージ、取扱説明書、営業資料、SNS投稿など使用目的を外部に示すすべての表示です。家庭用電気治療器や磁気治療器など施行令別表第一に類別がある製品群は、治療的な効果を少しでも標榜すると医療機器に該当する可能性が高い領域です。医療機器該当性の照会先は各都道府県の薬務主管課です。
プログラム(SaMD)
単体のソフトウェアやアプリは、厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日付け通知、令和5年3月31日一部改正)が判断の出発点です。クラスⅠ相当のプログラムは医療機器の範囲から除かれ、リスクの程度は①出力結果の重要性に鑑みて疾病の治療・診断等にどの程度寄与するか、②機能障害が生じた場合に生命・健康に影響を与えるおそれを含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度か、の2点を考慮して判断します。個人を特定して具体的な疾病名や罹患の可能性を表示するものは、使用者を問わず「診断」に用いるものとして扱われます。迷う場合は厚生労働省の該当性相談窓口(監視指導・麻薬対策課)とPMDAの医療機器プログラム総合相談が利用できます。
医薬品と健康食品
経口摂取する製品が医薬品に当たるかは、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日付け薬発第476号、最終改正令和2年3月31日)の別紙「医薬品の範囲に関する基準」により、①成分本質(原材料)、②形状(剤型・容器・包装・意匠)、③表示された使用目的・効能効果・用法用量、④販売方法・販売時の演述を総合的に判断します。外観から明らかに食品と認識される物、特別用途食品、機能性表示食品は原則として医薬品とは扱われません。規制の適用の有無そのものに迷う新規事業では、産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度も選択肢です。
業許可の3層構造 ― 製造販売業・製造業・販売業
薬機法の業規制は、①製品を市場に出す責任主体である製造販売業、②製品を作る製造所の製造業、③営業所で製品を売る販売業(医療機器は貸与業・修理業を含む)の3層です。法律上の許可権者は厚生労働大臣ですが、人に使用される医薬品・医療機器の製造販売業については、施行令80条により総括製造販売責任者が業務を行う事務所の所在地の都道府県知事が許可の事務を行います。
| 層 | 医薬品・医薬部外品・化粧品 | 医療機器・体外診断用医薬品 |
|---|---|---|
| 製造販売業(承認・認証・届出の主体) | 許可(12条)。第一種医薬品(処方箋医薬品)・第二種医薬品・医薬部外品・化粧品の4種。有効期間5年(施行令3条) | 許可(23条の2)。第一種(高度管理)・第二種(管理)・第三種(一般)・体外診断用医薬品の4種。有効期間5年(施行令36条) |
| 製造業(製造所ごと) | 許可(13条)。無菌・一般・「包装・表示・保管のみ」などの区分(施行規則25条)。5年(施行令10条)。外国製造業者は認定(13条の3) | 登録(23条の2の3。設計を含む)。設計・主たる組立て・滅菌・国内における最終製品の保管などが対象(施行規則114条の8)。5年(施行令37条の7)。外国製造業者は登録(23条の2の4) |
| 販売業(営業所ごと) | 薬局開設者または販売業の許可(24条)。店舗販売業・配置販売業・卸売販売業(25条)。卸売販売業は都道府県知事の許可(34条)。6年(24条2項) | 高度管理医療機器・特定保守管理医療機器は販売業・貸与業の許可(39条。都道府県知事等、6年更新)。管理医療機器は届出(39条の3)。一般医療機器は許可・届出不要。修理業は許可(40条の2。5年) |
自社工場で製造して自社ブランドで販売する会社は製造販売業と製造業の両方が、製造を全面委託する会社は製造販売業のみ(委託先が製造業)が必要です。輸入販売でも、国内で包装・表示・保管を行う製造所は製造業の許可(医療機器は登録)の対象です。承認は、申請者が製造販売業の許可を受け、製造所が製造業の許可・登録を受けていなければ与えられません(14条2項、23条の2の5第2項)。製造販売業の許可要件は、医薬品等では品質管理(GQP省令)と製造販売後安全管理(GVP省令)の方法の基準適合(12条の2)、医療機器等では製造管理・品質管理の体制(QMS省令)とGVP省令への適合(23条の2の2)で、申請書には組織図とこれらの体制に関する書類を添付します。
許可ごとに置くべき責任者と許可の要件
各層の許可には、法律で配置が義務付けられた責任者がいます。人材を確保できるかどうかが許可取得のスケジュールを左右します。
- 医薬品等総括製造販売責任者(17条1項・2項):医薬品は原則として薬剤師、医薬部外品・化粧品は省令で定める基準に該当する者。必要があるときは製造販売業者に書面で意見を述べる義務があり(17条3項)、製造販売業者はその意見を尊重し、講じた措置(講じない場合はその理由)を記録・保存します(18条2項)。
- 医薬品製造管理者・医薬部外品等責任技術者(17条5項・10項):製造所ごとに配置。医薬品は原則薬剤師。
- 医療機器等総括製造販売責任者(23条の2の14第1項・2項):省令で定める基準に該当する者。体外診断用医薬品は原則薬剤師。書面による意見申述と会社側の記録義務は医薬品と同じ構造です(23条の2の15第2項)。
- 医療機器責任技術者(23条の2の14第5項):製造所ごとに配置し、製造を実地に管理します。
- 高度管理医療機器等営業所管理者(39条の2):営業所ごとに配置し、原則として他の営業所等との兼務はできません。販売業者には、管理者の毎年度の継続的研修(施行規則168条)、従業者の教育訓練(169条)、購入・販売等の記録の3年間(特定保守管理医療機器は15年間)保存(173条)の義務があります。
- 医薬品営業所管理者(34条2項):卸売販売業の営業所ごとに配置します。
法人の許可申請書には「薬事に関する業務に責任を有する役員」の氏名を記載します(12条2項2号、23条の2第2項2号)。2025年5月21日公布の改正薬機法(令和7年法律第37号)には、法令違反等があった場合にこの責任役員の変更を命じる仕組みや、医薬品の製造販売業者における品質保証責任者・安全管理責任者の設置の法定化が盛り込まれ、厚生労働省の公表では2027年5月20日の施行が予定されています。
総括製造販売責任者・責任技術者・営業所管理者は名義を借りるポストではなく、法律上の意見申述権と会社側の記録義務で裏打ちされた機能です。採用・教育の計画と、意見を受け止める社内手順の整備を許可申請と並行して進めてください。
該当性判断を誤った場合のリスク ― 行政処分と罰則
「医療機器ではない」と整理して販売した製品が後に医療機器と判断されると、無許可の製造販売業と無承認品目の製造販売という2つの違反が同時に成立します。
- 刑事罰:製造販売業の無許可営業(12条1項・23条の2第1項違反)、無承認・無認証品目の製造販売(14条1項・23条の2の5第1項・23条の2の23第1項違反)、医薬品販売業・高度管理医療機器等販売業の無許可営業(24条1項・39条1項違反)は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です(84条)。無承認・無認証品目の製造販売は、法人に1億円以下の罰金が科され得ます(90条1号)。製造業の無許可・無登録や営業所管理者の不設置は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(86条)、一般医療機器の製造販売や管理医療機器の販売業の届出を怠った場合は50万円以下の罰金です(87条)。
- 承認前広告の禁止:承認・認証を受けていない医療機器・医薬品の名称・製造方法・効能効果・性能の広告は誰であっても禁止され(68条)、違反は2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金の対象です(85条5号)。「雑品のつもり」で治療効果を広告した場合に正面から問題になる条文です。
- 行政処分・事業上の影響:廃棄・回収等の命令(70条)、改善命令(72条)、業務改善命令(72条の4)、許可の取消し・業務停止命令(75条)のほか、取引先からの契約解除やアプリストアからの配信停止など、法的制裁より先に事業が止まることも少なくありません。
事業化前には、使用目的を一文で書き出し、表示・広告の表現を統一し、施行令別表第一やガイドラインの事例と照合したうえで、必要な許可の層と責任者を特定する順番で確認することをお勧めします。該当性の基本的な考え方は、事務所本体サイトのコラム「薬機法における「医療機器」該当性の判断ポイント」でも解説しています。
よくある質問(FAQ)
健康機器として販売する製品に「血行を促進」「疲労を回復」と表示しても問題ありませんか?
海外製品を輸入して販売するだけでも製造販売業の許可は必要ですか?
一般医療機器(クラスⅠ)を販売するのに許可や届出は要りますか?
製造販売業と製造業の両方の許可が必要になるのはどんな場合ですか?
健康管理アプリは医療機器プログラムに該当しますか?
業許可の有効期間はどれくらいですか?
まとめ
- 医薬品・医療機器の該当性は、薬機法2条の定義に照らし、表示・広告から読み取れる使用目的で判断する。医療機器は施行令別表第一、プログラムはSaMDガイドライン、経口製品は医薬品の範囲に関する基準が出発点になる。
- 医療機器はクラスⅠ(一般・届出)、Ⅱ(管理・認証または承認)、Ⅲ・Ⅳ(高度管理・承認)に分かれ、クラスが製造販売業許可の種類と販売規制まで決める。
- 業許可は製造販売業(5年)・製造業(5年)・販売業(6年)の3層で、輸入販売会社も製造販売業者になる。
- 総括製造販売責任者・責任技術者・営業所管理者の配置と、責任役員を含む薬事ガバナンスが許可の前提になる。
- 判断を誤ると無許可営業と無承認製造販売が同時に成立し、3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金、承認前広告の罰則、許可取消しのリスクがある。
当事務所は、医師免許と弁護士資格を併せ持つ弁護士を含む企業法務の弁護士チームで、製品の該当性判断から業許可の設計、表示・広告の確認、販売代理店契約までを一貫して支援しています。継続的な薬事判断の相談先として顧問弁護士サービスをご検討いただき、個別の製品について判断に迷われた段階でお問い合わせ(無料相談)からご連絡ください。チャット・オンラインで全国に対応しています。
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(e-Gov法令検索)― 2条・12条・13条・17条・23条の2・23条の2の3・23条の2の14・24条・39条・39条の3・40条の2・84条〜90条
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(e-Gov法令検索)― 3条・10条・36条・37条の7・54条・80条・別表第一
- 医療機器プログラムについて ― プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン・相談窓口(厚生労働省)
- 医薬品の範囲に関する基準の一部改正について(令和2年3月31日付け薬生発0331第33号)(厚生労働省)
- 医療機器分類と薬事審査関係部署について(PMDA 医療機器ユニット)
- 令和7年の医薬品医療機器等法等の一部改正について(厚生労働省)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。
