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医薬品・医療機器

医薬品・医療機器のライセンス契約・製造委託契約・販売代理店契約 ― 薬事上の役割分担、安全性情報、回収協力、独占権と最低購入量

海外メーカーの医療機器を輸入販売する、自社医薬品の製造を委託する、国内の販売代理店に製品を流す――医薬品・医療機器ビジネスの契約は、代金や納期を決めるだけでは足りません。薬機法上の責任を負う「製造販売業者」が誰か、副作用・不具合の情報が報告期限内に届く経路があるか、回収のときに誰が何をするかが契約に書かれていないと、規制対応の空白がそのまま事業リスクになります。この記事では、製造委託契約・ライセンス契約・販売代理店契約で定めるべき薬事上の役割分担、安全性情報の提供、回収時の協力、独占権と最低購入量の扱いを、薬機法と関係省令、独占禁止法の指針、製造物責任法に沿って整理します。

この記事の結論

医薬品・医療機器の契約では、薬機法上の責任主体である製造販売業者(承認・認証の取得者)を誰にするかを先に決め、GQP省令7条・QMS省令5条の5が求める製造業者との取決め事項、副作用・不具合の報告期限(施行規則228条の20の15日・30日)から逆算した情報提供期限、回収時の協力義務(薬機法68条の9)、承認の帰属と承継(14条の8・23条の2の11)を契約条項に落とし込むことが核心です。独占権・最低購入量は総代理店契約として独占禁止法上原則問題になりませんが、契約終了後の競争品取扱制限や再販売価格の拘束は問題になり得ます。

3つの契約と薬機法上の「誰が責任を負うか」

医薬品・医療機器の取引で使われる契約は、おおむね①開発・製造を他社に任せる製造委託契約(開発委託を含む)、②技術や承認に係るデータの使用を許諾するライセンス契約、③製品を国内外の販売店に流す販売代理店契約の3類型に整理できます。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は契約の形式にかかわらず「製造販売業者」に承認取得、品質管理、安全管理、回収の責任を集中させています。契約で責任を相手に移したつもりでも、行政に対する義務は製造販売業者から離れません。

契約類型薬機法上の主な論点契約で押さえる条項
製造委託契約委託先の製造業許可・登録、GQP省令7条・GMP省令・QMS省令が求める取決め、出荷判定、変更の事前連絡製造範囲と手順、技術条件、定期確認(監査)権、変更管理、品質情報の連絡責任者、記録の保存
ライセンス契約承認・認証の帰属、承認資料の使用権、承認の承継(14条の8・23条の2の11)、外国製造特例承認と選任製造販売業者許諾範囲、データの提供義務、承認取得・維持の費用負担、終了時の承継・返還、競業・改良技術
販売代理店契約販売業の許可・届出、販売業者の記録・情報提供義務、不具合情報の通知(施行規則171条)、回収協力(68条の9第2項)、広告規制の遵守独占権と最低購入量、販売地域、広告の事前審査、安全性情報の提供期限、回収費用、終了時の在庫処理

薬事上の役割分担 ― 製造販売業者・製造業者・外国製造業者・選任製造販売業者

薬機法2条13項は、自ら製造(他に委託して製造する場合を含み、他から委託を受けて製造する場合を除く)または輸入した製品を販売・貸与・授与することを「製造販売」と定義します。したがって、製造を全面的に委託しても、輸入して売るだけでも、市場に製品を出す会社が製造販売業者であり、製造販売業の許可(12条・23条の2)と品目ごとの承認・認証・届出の主体になります。受託製造を行う側は製造業の許可(13条)または登録(23条の2の3)を受けた製造業者で、承認は製造所が許可・登録を受けていないと与えられません(14条2項2号、23条の2の5第2項2号)。海外の製造所は外国製造業者の認定(13条の3)または登録(23条の2の4)を受けます。

輸入ビジネスには、国内の製造販売業者が自ら承認・認証を取得する方法のほか、外国の製造者が自ら「外国製造医薬品等特例承認」「外国製造医療機器等特例承認」を取得し、国内で危害防止措置を取らせるための製造販売業者(選任製造販売業者)を選任して製造販売させる方法があります(19条の2、23条の2の17)。どちらを選ぶかで、承認の名義、契約終了後に国内販売を続けられるか、変更手続の主導権が変わるため、ライセンス・輸入販売契約の冒頭で決めるべき論点です。

ポイント

「誰が製造販売業者か」は契約で自由に決められる反面、決めた後の義務は契約で免除できません。許可・登録・承認の名義を契約書の前文や定義で明示し、相手方の許可・登録の維持を表明保証と契約解除事由に組み込むのが基本形です。

製造委託契約で定める事項 ― GQP省令7条・GMP省令・QMS省令の取決め

医薬品の製造販売業者は、GQP省令(医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令)7条により、製造業者と次の事項を取り決め、品質管理業務手順書等に記載しなければなりません。

  • 製造業者における製造業務の範囲と、製造管理・品質管理・出荷に関する手順
  • 製造方法、試験検査方法等に関する技術的条件
  • 製造業務が適正かつ円滑な製造管理・品質管理の下で行われていることについての製造販売業者による定期的な確認
  • 製品の運搬・受渡し時における品質管理の方法
  • 製造方法・試験検査方法等の変更が品質に影響を及ぼすと思われる場合の、製造販売業者への事前連絡の方法と責任者
  • 製造・輸入・販売の中止、回収、廃棄等の措置に関する情報や品質等に関する情報についての、製造販売業者への速やかな連絡の方法と責任者

市場への出荷可否の決定(ロットごと)を製造業者に行わせる場合は、出荷管理の手順、決定者の指定、逸脱時の品質保証責任者への文書報告と指示、定期確認を受けることを、あらかじめ取り決める必要があります(GQP省令9条5項)。製造業者側にも、GMP省令11条の5により、試験検査等を外部委託する場合に文書で取決めを締結する義務と、委託先の適性・能力の確認、定期的な確認の義務があります。医療機器では、QMS省令5条の5が、製品要求事項への適合性に影響する工程を外部委託する場合に受託事業者による管理を確保し、合意した管理方法を「品質に関する実施要領」に定めることを求め、37条が購買物品等の供給者の評価・選定・監視・再評価の基準と計画を求めています。登録製造所からの不具合情報を製造販売業者に通知させる手順の文書化も必要です(QMS省令69条)。

省令上の取決めは契約条項として書かれていなければ相手方に履行を強制できません。品質取決め書と商務契約を分ける場合は、両者の優先関係、監査権の範囲(実地監査の頻度・費用)、変更管理の事前承認、記録の保存期間と閲覧権、委託先が再委託する場合の承認権を、商務契約側にも明記することをお勧めします。

副作用・不具合情報の提供と回収時の協力 ― 報告期限から逆算する契約条項

製造販売業者は、製品の副作用・不具合によるものと疑われる死亡・障害等や感染症の発生などを知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければなりません(68条の10第1項)。報告期限は施行規則228条の20で事象の区分ごとに定められ、死亡や未知の重篤な症例などは15日以内、その他の重篤症例や研究報告などは30日以内が基本です。GVP省令7条は、製造販売業者が収集すべき安全管理情報として、医療関係者からの情報、学会・文献報告、行政機関の情報、外国政府・外国法人等からの情報、他の製造販売業者等からの情報を挙げており、ライセンサーや海外メーカー、販売代理店は制度上も重要な情報源です。

場面法令上の義務(主体)契約で定める条項の例
副作用・不具合の発生厚生労働大臣への報告(製造販売業者・68条の10)。区分に応じ15日または30日以内(施行規則228条の20)。高度管理医療機器等の販売業者は製造販売業者への通知義務(施行規則171条)相手方が情報を知った日から数日以内の第一報、報告様式、海外の措置情報(製造・販売中止、回収等)の即時共有、連絡窓口と代替窓口
保健衛生上の危害のおそれ廃棄・回収・販売停止・情報提供等の措置(製造販売業者・68条の9第1項)。販売業者・修理業者等は措置への協力の努力義務(同条2項)回収の決定権者、代理店の在庫・出荷先情報の提供、回収費用と損失の負担、返品・代替品の扱い
回収の実施回収着手と状況の報告(製造販売業者・68条の11、施行規則228条の22)。高度管理医療機器等の販売業者は購入・販売記録を3年間(特定保守管理医療機器は15年間)保存(施行規則173条)記録の保存と提供義務、回収完了までの報告頻度、公表文の事前共有
中古品・修理使用された医療機器を販売する販売業者の製造販売業者への事前通知と指示遵守(施行規則170条)中古品販売の可否、整備基準、製造販売業者の指示権

15日・30日の期限は、製造販売業者が「知った」時点から走ります。代理店が情報を抱え込めば報告遅延はそのまま製造販売業者の違反になるため、契約上の第一報期限は「数営業日以内」といった短い設定にし、違反時の是正協力義務と費用負担を定めるのが実務です。

販売代理店契約 ― 独占権・最低購入量・競争品・終了後の扱いと独占禁止法

販売代理店側の薬事上の前提は、高度管理医療機器等の販売業・貸与業の許可(39条)、管理医療機器の届出(39条の3)、医薬品の卸売販売業の許可(34条)などを備えていることです。契約では相手方の許可・届出の表明保証に加え、広告規制(66条・68条)の遵守と販促資材の事前審査、適正広告基準に沿った表現の修正権を製造販売業者側に確保します。広告の主体は「何人も」であり、代理店の誇大広告でも製造販売業者が措置命令や課徴金の対象となり得るためです。

独占権と最低購入量については、公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」第3部(総代理店)が考え方を示しています。

  • 最低購入数量・金額、最善努力義務:一手販売権付与の見返りとして定めることは、原則として独占禁止法上問題となりません。
  • 競争品の取扱制限:契約期間中に競争品の取扱いを制限することは、総代理店がすでに取り扱っている競争品の取扱いを制限するものでなければ原則問題になりません。一方、契約終了後の競争品取扱制限は原則として問題となり、秘密情報の流用防止など正当な理由があり必要な範囲に限る場合に認められます。
  • 販売地域・販売先:許諾地域外で積極的に販売しない義務を課すことは原則問題になりません。国内の販売地域や販売先の制限は、指針第1部の流通業者に対する地域制限・取引先制限の考え方で判断されます。
  • 再販売価格の拘束:代理店の販売価格を拘束することは原則として違法です。希望価格は参考として示すにとどめます。
  • 並行輸入の阻害:並行輸入業者への販売中止の要請、修理・部品供給の拒否など価格維持のための阻害は問題となります。

契約終了時には、未販売在庫の買戻しや販売継続期間、顧客リストと安全性情報の引継ぎ、記録の保存義務の継続を定めます。代理店に設置を委託する設置管理医療機器では、設置管理基準書の交付と報告条項を含む委託契約が求められます(施行規則179条2項)。

ライセンス契約の薬事条項と製造物責任 ― 承認の帰属・承継、PL法上の責任

ライセンス契約で最も重要な薬事条項は、承認・認証を誰の名義で取得し、契約終了時にどう扱うかです。承認取得者の地位は、相続・合併・分割のほか、承認品目に係る資料等を承継させる目的で譲渡したときに譲受人に承継され、承継前に厚生労働大臣への届出が必要です(14条の8、医療機器は23条の2の11)。ライセンサーが承認資料の使用を許諾するだけの構成では、契約終了後にライセンシーが承認を維持できるかが不透明になるため、終了事由ごとに承継・返還・費用分担を決めておきます。あわせて、承認の一部変更承認や軽微変更届(14条13項・14項、23条の2の5第13項・14項)に必要な技術資料の提供義務、海外の規制当局の措置情報の共有、副作用情報の相互提供(前章)を定めます。

製造物責任法との関係では、「製造業者等」に当該製造物を業として製造・加工または輸入した者が含まれます(PL法2条3項1号)。輸入販売を行う製造販売業者は、自ら製造していなくても製造業者等として、製造物の欠陥により生命・身体・財産を侵害したときの損害賠償責任を負います(3条)。自社の氏名・商号を製造業者として表示した者も同様です(2条3項2号・3号)。免責事由は引渡し時の科学技術の知見では欠陥を認識できなかったことなどに限られ(4条)、損害賠償請求権は損害と賠償義務者を知った時から3年(人の生命・身体の侵害は5年)、引渡しから10年で時効消滅します(5条)。したがって、海外メーカーとの契約では、国内で製造物責任を負った場合の求償・補償条項、保険の付保、欠陥情報の通知義務、国内での訴訟対応への協力を定めることが、承認の帰属と並ぶ必須条項になります。

ポイント

契約書の「薬事条項」は、相手方の許可・登録の維持、承認の帰属と承継、安全性情報の第一報期限、回収の決定権と費用、製造物責任の補償の5点で骨格ができます。この5点が空欄の契約は、事故や終了のときに初めて空白が露出します。

よくある質問(FAQ)

製造を全面的に委託しているので、品質の責任は委託先が負うという契約にできますか?
当事者間の費用負担や求償は契約で定められますが、薬機法上の製造販売業者としての品質管理・安全管理・回収の義務は委託によって免れません。GQP省令7条やQMS省令5条の5が求める取決めを契約と手順書に落とし込み、定期的な監査で委託先を管理することが前提になります。
海外メーカーの承認を使って輸入販売する場合、契約終了後も販売を続けられますか?
承認の名義によります。外国製造特例承認を海外メーカーが取得し、自社が選任製造販売業者である構成では、選任を解かれると製造販売の根拠を失います。自社名義で承認を取得する構成や、終了時の承認承継(14条の8・23条の2の11)と資料提供の条項を契約で定めておく必要があります。
販売代理店に独占権を与える代わりに最低購入量を課すことは独占禁止法上問題ですか?
公正取引委員会の流通・取引慣行指針は、総代理店契約で最低購入数量・金額や最善努力義務を定めることは原則として問題にならないとしています。問題になり得るのは、契約終了後の競争品取扱制限、再販売価格の拘束、並行輸入の阻害などです。
代理店から不具合情報が届くのが遅く、15日以内の報告に間に合いません。どうすべきですか?
報告期限は製造販売業者が情報を知った時から起算されますが、代理店が情報を抱え込めば結果として報告が遅れます。契約で代理店の第一報期限を数営業日以内に設定し、報告様式と連絡窓口を別紙で定め、違反時の是正協力義務を置くことが実務上の対応です。
輸入販売業者でも製造物責任を負いますか?
負います。製造物責任法2条3項1号は製造物を業として輸入した者を製造業者等に含めており、欠陥による損害について無過失責任を負います。海外メーカーとの契約では、求償・補償条項、保険、欠陥情報の通知義務を定めてください。
回収が必要になった場合、代理店に協力させる根拠はありますか?
薬機法68条の9第2項は、販売業者・貸与業者・修理業者等に製造販売業者の回収等の措置への協力の努力義務を定めていますが、努力義務にとどまります。在庫・出荷先情報の提供、回収費用の負担、返品の扱いを契約で具体的に定めておくことで、実効性のある回収が可能になります。

まとめ

  • 製造委託・ライセンス・販売代理店のどの契約でも、薬機法上の責任は製造販売業者(承認・認証の取得者)に集中し、契約で相手に移すことはできない。まず名義と役割分担を決める。
  • 製造委託契約は、GQP省令7条(製造業務の範囲、技術条件、定期確認、変更の事前連絡、情報連絡の責任者)やQMS省令5条の5・37条の取決めを、監査権・変更管理・記録閲覧権とともに商務契約に明記する。
  • 副作用・不具合報告(15日・30日)、回収措置(68条の9)、回収報告(68条の11)から逆算して、代理店・ライセンサーの第一報期限、回収協力、費用負担を定める。
  • 独占権と最低購入量は総代理店契約として原則問題ないが、契約終了後の競争品制限、再販売価格の拘束、並行輸入の阻害は独占禁止法上問題となり得る。
  • 承認の帰属と承継(14条の8・23条の2の11)、輸入業者も負う製造物責任(PL法2条3項・3条)への補償条項が、ライセンス・輸入販売契約の必須条項になる。

当事務所は、医師免許と弁護士資格を併せ持つ弁護士を含む企業法務の弁護士チームで、海外メーカーとのライセンス・輸入販売契約、製造委託契約と品質取決め書、販売代理店契約の起案・レビューを、薬事上の役割分担と独占禁止法の観点を含めて支援しています。契約の雛形整備から個別交渉まで継続的に相談できる顧問弁護士サービスをご検討いただき、契約書案のレビューや交渉方針はお問い合わせ(無料相談)からご連絡ください。チャット・オンラインで全国に対応しています。該当性の基本は本体サイトのコラム「薬機法における「医療機器」該当性の判断ポイント」をご参照ください。

参考(一次情報)
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この記事の執筆者
弁護士・医師 澄川 淳矢弁護士法人 越水法律事務所 弁護士・医師(第一東京弁護士会)

京都大学医学部卒業、倉敷中央病院での初期研修を修了した医師であり、弁護士。医療現場での経験を背景に、病院・クリニック・介護事業者・医薬品・医療機器・ヘルステック企業の法務について、医療の実態を踏まえた実践的な助言を行う。

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越水 遥
この記事の監修者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。医療機関・ヘルスケア企業の顧問として、経営の視点を踏まえた法務支援を行う。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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