「シワが消える」「美白」「医師も推奨」――化粧品のLPやSNS投稿で使いたくなる表現ほど、薬機法の線を越えやすいものです。化粧品が広告で表現できる効能は、厚生労働省の通知が定める56項目に限られており、その枠を超えた一言が措置命令や課徴金につながることがあります。この記事では、化粧品の効能表現の範囲、医薬部外品(薬用化粧品)との違い、製造販売業の許可・届出、全成分表示まで、化粧品メーカー・D2C事業者が押さえておくべき薬機法のルールを条文と通知に沿って整理します。
化粧品の広告で表現できる効能は、厚生労働省通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)の56項目と、事実に反しないメーキャップ効果・使用感に限られます。これを超える表現は薬機法66条(虚偽・誇大広告)等に抵触し、措置命令(72条の5)、対価合計額の4.5%の課徴金(75条の5の2)、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(85条)の対象になります。
化粧品とは何か ― 薬機法2条3項の定義
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)2条3項は、化粧品を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」と定義し、疾病の治療・予防や身体の構造・機能への影響を併せて目的とする物と医薬部外品を除いています。
ここから、「作用が緩和」という性質に反する表現(治す、身体の機能を変える)は化粧品の広告として許されず、その境界を超えた表現を使った途端に、製品が「承認を受けていない医薬品」として扱われる危険が生じます。表現の問題が製品の法的な区分まで変えてしまう点が、化粧品の広告規制の特徴です。
化粧品は「承認不要・届出で販売できる」代わりに、効能の表現が通知で列挙された範囲に限定されています。手続の軽さと表現の制限はセットで設計されています。
化粧品が表現できる効能56項目
化粧品で表示・広告できる効能は、厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)の別表第1に列挙された56項目に限られます。もとは55項目で、この通知により「(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。」が追加されました。
| 分類 | 別表第1の効能の例 | 範囲外の例 |
|---|---|---|
| 頭皮・毛髪 | 頭皮、毛髪を清浄にする/フケ、カユミを抑える/裂毛、切毛、枝毛を防ぐ | 育毛・発毛・脱毛の防止(医薬部外品・医薬品の領域) |
| 皮膚 | 肌を整える/肌荒れを防ぐ/肌をひきしめる/皮膚にうるおいを与える/皮膚を保護する/肌にはりを与える/乾燥による小ジワを目立たなくする | シワを消す、たるみを改善、美白、ニキビを治す |
| 日やけ | 日やけを防ぐ/日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ | シミを消す、できてしまったシミに |
| 口唇・爪・歯みがき類 | 口唇の荒れを防ぐ/爪を保護する/ムシ歯を防ぐ・歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類の限定付き) | 部位・製品ごとの限定を外して使えない |
同日付の課長通知「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」は、広告できる効能は別表第1の範囲であり、かつ当該製品について該当する効能に限ると明記しています。56項目に載っていても、自社製品が実際にその効能を持たなければ表現できません。追加された「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、通知が指定する評価ガイドラインに基づく試験またはそれと同等以上の試験で効果を確認し、資料を製造販売業者が保管し、消費者に根拠を説明できる体制を整えることが条件です。
一方、同通知は、これらの効能以外のメーキャップ効果(カバーする、血色よく見せる等)や使用感(さっぱりする、しっとりする等)の表示・広告は、事実に反しない限り認められると確認しています。「生理的な効能」を語るか「見た目・感触」を語るかが線引きになります。
医薬部外品(薬用化粧品)との違い
「薬用」と表示された化粧品は、法律上は化粧品ではなく医薬部外品です。薬機法2条2項は、人体に対する作用が緩和なもののうち、体臭・あせも等の防止や育毛等を目的とする物(1号)、害虫の防除を目的とする物(2号)、医薬品の目的に使用される物のうち厚生労働大臣が指定するもの(3号)を医薬部外品と定義しています。薬用化粧品は3号の区分に属し、品目ごとに厚生労働大臣の承認(14条1項)を受けて販売されます。
| 項目 | 化粧品 | 医薬部外品(薬用化粧品) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 薬機法2条3項 | 薬機法2条2項 |
| 品目ごとの手続 | 製造販売の届出(14条の9) | 製造販売の承認(14条1項) |
| 効能の表現範囲 | 通知の56項目+事実に反しないメーキャップ効果・使用感 | 承認を受けた効能効果の範囲 |
| 「有効成分」の表示 | 不可(全成分を表示) | 承認された有効成分として表示可 |
| 広告基準 | いずれも医薬品等適正広告基準の対象(ウェブサイト・SNSを含むすべての媒体) | |
判断の軸は「表現したい効能が56項目にあるか」です。美白を訴求したいなら、化粧品では「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」までしか言えず、それ以上は医薬部外品として承認を取る必要があります。逆に、承認を取った医薬部外品でも、承認された効能効果を超える「シミが消える」等の表現は許されません。なお「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、通知の条件を守れば薬用化粧品の広告でも使用できます。
医薬部外品は「化粧品より強い表現ができる区分」ではなく、「承認を受けた効能だけを表現できる区分」です。承認書の効能効果欄が広告表現の上限になります。
広告でNGになる表現と言い換え ― 薬機法66条と医薬品等適正広告基準
薬機法66条1項は、「何人も」医薬品・医薬部外品・化粧品等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関して、明示的・暗示的を問わず、虚偽または誇大な記事を広告・記述・流布してはならないと定めています。製造販売業者だけでなく、販売店、広告代理店、アフィリエイター、インフルエンサーも対象です。同条2項は、医師その他の者が効能・効果を保証したものと誤解されるおそれのある記事も誇大広告に当たるとしています。
具体的な線引きは、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日薬生発0929第4号で全面改正)が示しています。化粧品に関わる主な項目は、承認を要しない化粧品の効能効果の表現は平成23年通知の範囲を超えてはならないこと(第4の3(2))、具体的な効能効果や安全性が確実であると保証する表現の禁止(同(5))、最大級表現の禁止(同(6))、医薬関係者・理容師・美容師・病院・学会等が推せん・選用している等の広告の禁止(第4の10)、他社製品を誹謗する広告の制限(第4の9)です。
| NG表現の例 | 問題となる理由 | 言い換えの方向性 |
|---|---|---|
| 「シワが消える」「たるみを改善」 | 56項目にない生理的効能。身体の構造・機能への影響を示す | 「乾燥による小ジワを目立たなくする」(試験で確認した製品のみ)/「肌にはりを与える」 |
| 「美白」「シミが薄くなる」 | 化粧品では「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」まで | 「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」/メーキャップ効果として「明るい肌に見せる」 |
| 「アトピーに」「ニキビが治る」 | 疾病の治療・予防は医薬品の効能 | 「(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ」(洗顔料のみ)/「肌荒れを防ぐ」 |
| 「医師が推奨」「皮膚科医も愛用」 | 66条2項・適正広告基準第4の10 | 推せん表現は使わない |
| 「100%実感」「副作用なし」「業界最高の保湿力」 | 保証表現・最大級表現 | 「うるおいを与える」等、効能の範囲内で事実を記載 |
使用前後の写真や体験談も、効能効果の保証表現と判断されやすい類型です。見た目の変化をメーキャップ効果や使用感の範囲で示すことはできますが、「〇週間でシミが消えた」のように生理的効能の変化を印象づける使い方は避ける必要があります。
製造販売業の許可・製造業の許可・品目ごとの届出
- 化粧品製造販売業の許可(12条):自社名で市場に出荷する「製造販売」には厚生労働大臣の許可が必要です。申請には総括製造販売責任者の氏名、品質管理と製造販売後安全管理の体制に関する書類を添え、3年を下らない政令で定める期間ごとに更新します(12条4項)。
- 化粧品製造業の許可(13条):製造には製造所ごとに許可が必要で、責任技術者の設置と構造設備基準への適合が求められます。製造を外部に委託していても、自社で包装・表示・保管を行う場合は製造業許可の区分が関係します。
- 品目ごとの製造販売届(14条の9):化粧品は承認を要しない代わりに、製造販売業者が品目ごとにあらかじめ厚生労働大臣に届け出ます。届出事項を変更したときは30日以内の変更届が必要です。
OEMで製造を委託し自社ブランドで販売するだけの事業者でも、自社名で市場に出す以上は製造販売業の許可が必要になるのが原則です。許可を持たないまま販路だけを担うなら、許可を持つ製造販売元の名称を容器に記載し、自社は販売業者の立場にとどまる契約・表示の設計が必要です。
全成分表示と容器の記載事項(薬機法61条)
薬機法61条は、化粧品の直接の容器または被包への記載事項として、製造販売業者の氏名または名称および住所、名称、製造番号または製造記号、厚生労働大臣の指定する成分の名称、指定された化粧品の使用期限、化粧品基準で定められた事項などを挙げています。「厚生労働大臣の指定する成分」は告示によってすべての配合成分が指定されており、承認制の廃止と表裏一体の措置として2001年4月から全成分表示が実施されています。成分名は配合量の多い順に、消費者が理解できる表示名称で記載するのが基本です。
D2C事業者が特に注意したいのは「製造販売業者」欄です。ブランド会社の名前だけを記載し、許可を持つ製造販売元を記載しないパッケージは61条違反になります。パッケージデザインの段階で、法定記載事項と広告表現の双方を確認する手順を組み込んでください。
違反したときの措置 ― 措置命令・課徴金・罰則
- 措置命令(72条の5):厚生労働大臣または都道府県知事は、66条1項・68条に違反した者に対し、行為の中止、再発防止に必要な事項、公示などを命ずることができます。違反行為が終わっていても、事業を承継した法人等に命令できます。
- 課徴金納付命令(75条の5の2):66条1項違反については、課徴金対象期間(最長3年)に取引した対象製品の対価合計額の4.5%が課されます。計算額が225万円未満なら命じられません。令和元年改正で導入され2021年8月から施行された制度で、調査前に自ら報告すれば50%減額されます(75条の5の4)。
- 刑事罰(85条):66条1項・68条違反、72条の5の命令違反は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科です。
「ニキビが治る」のような表現を使うと製品自体が承認を受けていない医薬品と評価され、68条(承認前の医薬品の広告禁止)の問題にも波及し得ます。さらに同じ表現は景品表示法5条1号の優良誤認表示にも該当し得るため、消費者庁の措置命令や売上額の3%の課徴金(景品表示法8条)が別途問題になります。両法の課徴金が重なる場合は薬機法側から3%相当額を減額する調整規定(75条の5の3)がありますが、どちらの当局からも調査を受け、社名が公表されるリスクは残ります。
当事務所は、企業法務の弁護士チームに医師資格を持つ弁護士が加わり、化粧品・健康食品の広告表現を薬機法と景品表示法の双方から確認する体制を整え、チャット・オンラインで全国の事業者に対応しています。
よくある質問(FAQ)
化粧品の広告で「乾燥による小ジワを目立たなくする」と書くには何が必要ですか?
「美白化粧品」という表現は使えますか?
インフルエンサーが自分の言葉で「シワが消えた」と投稿した場合、メーカーに責任はありますか?
OEMで製造してもらい自社ブランドで販売するだけでも、製造販売業の許可は必要ですか?
使用前後の写真をLPに載せても問題ありませんか?
まとめ
- 化粧品の広告で表現できる効能は、厚生労働省通知の56項目と、事実に反しないメーキャップ効果・使用感の範囲に限られる
- 「薬用」は医薬部外品であり、表現の上限は承認書の効能効果欄。化粧品より自由なのではなく、承認の範囲内で表現できる区分
- 保証表現・最大級表現・医師等の推せんは薬機法66条と医薬品等適正広告基準で禁止され、「何人も」が対象
- 製造販売業の許可(12条)、製造業の許可(13条)、品目ごとの届出(14条の9)、全成分表示(61条)は、OEM・D2Cでも自社の責任範囲を整理して対応する
- 違反すると措置命令・4.5%の課徴金・刑事罰のほか、景品表示法の措置命令と公表が重なるリスクがある
化粧品の表現は、企画・制作・公開のどこかで一度、条文と通知に照らして確認する仕組みがあるかどうかで結果が変わります。新商品のLPやSNS運用を継続して確認したい事業者には顧問弁護士サービスを、個別の広告表現やパッケージ、行政からの照会への対応についてはお問い合わせ(無料相談)をご利用ください。化粧品・健康食品分野の他の記事は分野別ページから、医療機関の広告については事務所本体サイトの医療広告の注意点 ― 医療法・薬機法・景表法・特商法の観点からをご参照ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。
