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プログラム医療機器(SaMD)の該当性判断 ― 薬機法2条4項とガイドライン、非該当アプリの設計、承認・変更手続と二段階承認

「このヘルスケアアプリは薬機法の医療機器に当たるのか」「AIで画像を解析する機能を足したら承認が必要になるのか」――プログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)の該当性は、ヘルステック企業の事業計画を左右する最初の分岐点です。該当すれば製造販売業の許可と品目ごとの承認・認証が必要になり、開発期間と費用が大きく変わります。この記事では、薬機法2条4項の定義と厚生労働省「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」の考え方、非該当アプリとして設計する際の注意点、該当する場合の承認・認証と市販後の変更手続、二段階承認の仕組みを、条文と通知を確認しながら整理します。

この記事の結論

プログラムが医療機器(SaMD)に該当するかは、技術的な中身ではなく「疾病の診断・治療・予防に使うという使用目的」と「不具合時の人体へのリスクの程度」で判断されます。薬機法2条4項の定義に当たり、かつ一般医療機器(クラスⅠ)相当を超えるリスクがあるプログラムが規制対象で、該当すれば製造販売業許可(23条の2)と品目ごとの承認(23条の2の5)または認証(23条の2の23)が必要です。

薬機法上の「医療機器プログラム」とは ― 2条4項・2条13項と施行令

薬機法2条4項は、医療機器を「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるもの」と定義しています。「機械器具等」にはプログラムと記録媒体が含まれると同条1項で明記されており、単体のソフトウェアやアプリも定義上は医療機器になり得ます。同条13項は「医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。)」を電気通信回線を通じて提供することも「製造販売」に含めており、ダウンロード配信やクラウド提供も物の販売と同じ規制の対象です。

薬機法施行令の別表第一には「疾病診断用プログラム」「疾病治療用プログラム」「疾病予防用プログラム」が掲げられる一方、不具合が生じても人の生命・健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(一般医療機器・クラスⅠ相当)は医療機器の範囲から除かれています。

ポイント

プログラムが規制対象になる条件は、①医療機器の定義に当たる使用目的を持つこと、②クラスⅠ相当を超えるリスクがあること、の2つです。健康管理アプリの多くは①を満たさず、満たしても②で外れるものがあります。

該当性判断の基本 ― 使用目的とリスク、表示・広告が決め手

厚生労働省は2021年(令和3年)3月31日付けで「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」を通知し、2023年(令和5年)3月31日に一部改正しました。ガイドラインは、該当性を「製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するか」で判断すると明記しています。同じ機能でも標榜する使用目的が異なれば結論が変わり得るため、開発の初期段階から「どのような表示を行うか」を含めて使用目的を明確にする必要があります。

ガイドラインが整理を求める項目は、①使用者(医療関係者か一般利用者か)、②使用目的(健康管理、運動管理、院内業務支援、疾病の診断・治療・予防、治療方針の策定支援など)、③処理方法(表示・保管・転送にとどまるか、疾病候補・罹患リスクの表示や推奨治療法の提示に及ぶか)、④アルゴリズム(公知の情報に従うか独自か、使用者が妥当性を検証できるか)、⑤同一機能の医療機器の有無です。複数の機能を持つプログラムは機能ごとに確認し、1つでも定義を満たせばプログラム全体が流通規制の対象になります。

医療機器に該当しない典型例と「非該当アプリ」の設計

ガイドラインは、医療機器の定義を満たさず規制対象にならないプログラムの典型例を4類型で示しています。自社サービスの各機能がどの類型に収まるかを確認します。

非該当とされる類型具体例該当し得る方向への変更の例
(1)患者説明を目的とするプログラム医療関係者が患者や家族に治療方法等を理解してもらうための説明用アプリ患者個人の検査値から治療の選択肢を推奨する
(2)院内業務支援・メンテナンス健康記録の記録・閲覧・転送、予約・受付・会計の支援、医療機器の保守時期の通知記録データを解析して疾病の兆候を警告する
(3)使用者が自らの医療・健康情報を閲覧等するプログラム血糖値・血圧・心拍数・体重を記録し家族や医療関係者と共有、経時的表示や統計処理した数値の表示。競技力・体力向上目的の運動管理記録値から疾病の罹患リスクや疾病候補を表示する
(4)生命・健康に影響を与えるリスクが低いプログラム有体物の一般医療機器(クラスⅠ)と同等の処理を行うものクラスⅡ以上の医療機器と同等の処理を行う

非該当アプリの落とし穴は、機能より「見せ方」にあります。アプリストアの説明文やLPに「〇〇病のリスクが分かる」「医師の診断を代替」といった表現が入れば使用目的の標榜として該当性判断に影響し、医療機器としての効能・効果を標榜していると見られれば薬機法68条などの広告規制に抵触するおそれもあります。ガイドラインは、非該当と確認したプログラムに「疾病の診断、治療、予防を目的としていない」旨を表示することが望ましいとしています。実務では、機能追加のたびの再判定、マーケティング表現の法務・薬事による事前確認、利用規約と画面上での目的の限定を運用ルールにしておくことが現実的です。

該当性判断の手順と相談窓口

ガイドラインが示す手順は、①使用者・使用目的・処理方法・アルゴリズム・提供方法を整理する事前準備、②厚生労働省の一般的名称通知から相当する一般的名称を検索する(類別がプログラムの一般的名称は2023年1月16日時点で186種類あり、相当する名称があれば原則としてその医療機器に該当。有体物のクラスⅠ医療機器の定義欄に当たるプログラムは規制対象外)、③相当する名称がない場合は別紙1の「医療機器該当性に係るフローチャート」(疾病リスクを表示するものは別紙2)で判定する、の3ステップです。

判然としない場合の入口は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の「SaMD一元的相談窓口」です。医療機器該当性(厚生労働省監視指導・麻薬対策課)、薬事開発(PMDA)、医療保険の相談を一つの窓口で無料で受け付けています。厚生労働省の「医療機器プログラム事例データベース」(2026年9月8日更新)で過去の判断事例と照合することもでき、新規性の高いモデルでは産業競争力強化法のグレーゾーン解消制度も選択肢です。

該当する場合の手続 ― 製造販売業許可、承認・認証、QMS

医療機器に該当する場合、「業態の許可」と「品目ごとの手続」の両方が必要です。

区分業態(薬機法23条の2)品目ごとの手続
高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)第一種医療機器製造販売業許可厚生労働大臣の承認(23条の2の5)。認証基準があるものは登録認証機関の認証(23条の2の23)
管理医療機器(クラスⅡ)第二種医療機器製造販売業許可認証基準があれば認証(23条の2の23)、なければ承認(23条の2の5)
一般医療機器(クラスⅠ)第三種医療機器製造販売業許可製造販売の届出(23条の2の12)。ただしプログラム単体は原則として医療機器の範囲から除外

クラス分類はGHTFのクラス分類ルールを参考に判定し、医師の診断補助や追加検査の推奨を目的とするプログラムは「診断」を意図するものとして分類されます。業態の許可には製造管理・品質管理(QMS省令)と製造販売後安全管理(GVP省令)の体制、医療機器等総括製造販売責任者の設置が必要で、製造所は製造業の登録(23条の2の3)を受けます。承認・認証前にその名称や性能を広告することは68条で禁止されています。

市販後の変更と二段階承認

プログラムはアップデートが前提の製品です。承認された事項(使用目的、性能、アルゴリズムの仕様など)の変更は原則として一部変更承認(23条の2の5第13項)が必要で、影響が軽微な変更は届出で処理します。判断を誤れば無承認の医療機器を提供したことになるため、アップデート前に薬事担当が仕様差分を確認する体制が欠かせません。

2020年(令和2年)9月1日施行の改正薬機法では、承認を受けた者があらかじめ変更計画の確認を受け、計画に従った変更を事前の届出で実施できる変更計画確認手続(23条の2の10の2)が設けられました。性能や製造方法などの変更で、変更後も効果・性能を失わず有害な作用を生じないことが確認できる計画が対象です。学習データの追加で精度を改善していくAIプログラムなどでは、この制度を開発計画に組み込むことで変更ごとの一部変更承認を避けられる可能性があり、対象になるかはPMDAの医療機器開発前相談で事前に助言を受けることとされています。

さらに厚生労働省は2023年(令和5年)11月16日付け通知「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱いについて」(医薬機審発1116第2号)で、疾病診断用プログラムは非臨床試験や性能試験で示せる使用目的・効果の範囲に限定した「第1段階承認」を取得し、市販後の製造販売後臨床試験やリアルワールドデータで臨床的エビデンスを確立したうえで「第2段階承認」を取得する戦略、疾病治療用プログラムは探索的治験で一定の有効性が確認できる範囲に限定して第1段階承認を取得する戦略を示しました。ただし、がんの治療方針など医学的判断に大きく影響する検査、遺伝子関連検査、既に判断基準が確立している分野には原則適用されず、通知は二段階承認を「選択肢の一つ」と位置づけています。

判断を誤ったときのリスクと事業化前チェックリスト

医療機器に該当するプログラムを許可・承認なく提供した場合、薬機法84条により3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(併科あり)の対象になります(無許可製造販売、無承認、無認証)。虚偽・誇大広告(66条1項)や承認前広告(68条)の違反は2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金(85条)で、66条1項違反には対価合計額の4.5%の課徴金納付命令の制度もあります(75条の5の2)。違反品の廃棄・回収等の行政措置(70条)、アプリストアからの配信停止、資金調達や上場審査への影響も現実的です。

  • 機能ごとに使用者・使用目的・処理方法・アルゴリズムを書き出し、非該当4類型とフローチャートで判定したか
  • アプリストア説明文・LP・営業資料に疾病の診断・治療・予防を示唆する表現がないか法務・薬事が確認したか
  • 一般的名称通知と事例データベースで類似品目を検索し、迷う場合はSaMD一元的相談窓口に照会したか
  • 該当し得る場合、クラス分類の見当を付け、必要な製造販売業許可とQMS体制を事業計画・資金計画に織り込んだか
  • アップデート方針を一部変更承認・軽微変更届・変更計画確認手続のどれで対応するか決め、二段階承認の適用可否を開発前相談で確認したか

よくある質問(FAQ)

血圧や体重を記録してグラフ表示する健康管理アプリは、医療機器プログラムに該当しますか?
医療機器等から取得したデータを使用者が記録し、経時的な表示や統計処理をした数値を表示して家族や医療関係者と共有するにとどまるアプリは、ガイドラインで非該当の典型例とされています。ただし、記録値から疾病の罹患リスクや疾病候補を表示する機能を加えると該当し得るため、機能追加の際は再判定が必要です。
医師向けの診断支援AIで、最終判断は医師が行う設計です。それでも医療機器になりますか?
医師が最終判断を行う設計でも、疾病の診断を補助・支援することを目的とするプログラムは医療機器の定義に当たり得ます。ガイドラインは、医師の診断補助や追加検査の推奨を目的とするプログラムを「診断」を意図するものとして分類しています。医師の最終判断は責任の所在の問題であり、該当性の判断とは別です。
非該当のアプリとして配信した後、機能追加で医療機器に該当するようになった場合はどうなりますか?
該当する機能を含むバージョンを配信する前に、製造販売業の許可と品目ごとの承認・認証を取得する必要があります。1つの機能でも定義を満たせばアプリ全体が規制対象になるため、該当機能を別アプリに分離するか、承認取得まで公開を見合わせる判断が必要です。承認前にその機能を広告することも68条で禁止されています。
承認取得後にアルゴリズムを改良するたびに、承認を取り直す必要がありますか?
承認事項に関わる変更は原則として一部変更承認が必要で、軽微な変更は届出で対応します。アップデートを繰り返す見込みがある場合は、変更計画をあらかじめ確認してもらい計画に沿った変更を届出で実施できる変更計画確認手続(薬機法23条の2の10の2)の利用を検討してください。対象になるかはPMDAの開発前相談で助言を受けます。
二段階承認を使えば、治験なしで早く市場に出せるのですか?
二段階承認は、非臨床試験や性能試験で示せる範囲、または探索的治験で一定の有効性が確認できる範囲に使用目的・効果を限定して第1段階承認を取得し、市販後のエビデンスで第2段階承認を目指す考え方です。使用目的が限定されるため広告できる範囲も限られ、医学的判断に大きく影響する検査や既に判断基準が確立した分野には原則適用されません。採用はPMDAの開発前相談で審査側と意見交換のうえ判断します。

まとめ

  • プログラムの医療機器該当性は、薬機法2条4項の使用目的(疾病の診断・治療・予防)とリスクの程度で判断され、表示・説明資料・広告の内容が判断材料になります。クラスⅠ相当は医療機器の範囲から除かれます。
  • 健康記録の保存・表示、運動管理、患者説明、院内業務支援は非該当の典型例ですが、疾病リスク・疾病候補の表示や推奨治療法の提示に踏み出すと該当し得ます。複数機能のうち1つでも該当すれば全体が規制対象です。
  • 判断は一般的名称の検索とフローチャートで行い、迷う場合はPMDAのSaMD一元的相談窓口(無料)や事例データベースを活用します。
  • 該当すれば製造販売業許可(23条の2)と承認(23条の2の5)または認証(23条の2の23)、QMS・GVP体制が必要です。市販後の変更は一部変更承認・軽微変更届・変更計画確認手続(23条の2の10の2)で管理し、二段階承認は選択肢の一つです。
  • 無許可・無承認の提供は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(84条)、広告違反は85条の罰則と課徴金の対象になり得ます。

該当性の判断は、技術仕様だけでなくマーケティング上の表現や将来の機能追加まで含めて行う必要があり、一度の判断で終わりません。当事務所には医師免許と弁護士資格を併せ持つ弁護士が在籍し、企業法務の弁護士チームと弁理士・税理士・司法書士が連携して、該当性の整理、相談窓口への照会資料の作成、利用規約や広告表現の確認、医療機関との契約まで一貫してサポートしています。開発中のサービスについて継続的に相談したい場合は顧問弁護士サービスを、まず現状の整理から始めたい場合はお問い合わせ(無料相談)をご利用ください。チャット・オンラインで全国から対応しています。

参考(一次情報)
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この記事の執筆者
弁護士・医師 澄川 淳矢弁護士法人 越水法律事務所 弁護士・医師(第一東京弁護士会)

京都大学医学部卒業、倉敷中央病院での初期研修を修了した医師であり、弁護士。医療現場での経験を背景に、病院・クリニック・介護事業者・医薬品・医療機器・ヘルステック企業の法務について、医療の実態を踏まえた実践的な助言を行う。

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越水 遥
この記事の監修者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。医療機関・ヘルスケア企業の顧問として、経営の視点を踏まえた法務支援を行う。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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