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化粧品・健康食品

機能性表示食品とトクホの制度 ― 届出制と許可制の違い・表示できる機能・2024年見直し(健康被害報告・GMP要件化)

「おなかの調子を整える」「内臓脂肪を減らすのを助ける」――健康食品で身体の機能を表示したいなら、機能性表示食品の届出か特定保健用食品(トクホ)の許可という制度を使うことになります。2024年の紅麹関連製品の事案を受けて機能性表示食品制度は大きく見直され、健康被害情報の報告義務、年1回の自己点検報告、そして2026年9月1日に完全施行されたGMPに基づく製造管理が届出者の要件となりました。この記事では、届出制と許可制の違い、表示できる機能の範囲、届出の流れ、見直し後に届出者が守るべき事項、違反時の措置を、食品表示基準と消費者庁の資料に沿って整理します。

この記事の結論

特定保健用食品は健康増進法43条1項に基づき国が有効性・安全性を審査して許可する制度、機能性表示食品は食品表示基準2条1項10号に基づき事業者の責任で販売60日前までに消費者庁長官へ届け出る制度です。2024年8月23日の食品表示基準改正により、機能性表示食品の届出者には、医師の診断がある健康被害情報を知った日から原則15日以内に都道府県知事等と消費者庁長官へ提供する義務(2024年9月1日施行)、年1回の自己点検等報告、錠剤・カプセル剤等についてGMPに基づく製造管理(2026年9月1日完全施行)が課されています。

保健機能食品の3制度 ― トクホ・機能性表示食品・栄養機能食品の位置づけ

一般の食品は、身体の機能や特定の保健の目的が期待できる旨を表示できません。食品表示基準9条1項10号は、保健機能食品以外の食品に、保健機能食品と紛らわしい名称や、栄養成分の機能・特定の保健の目的が期待できる旨を示す用語を表示することを禁じています。機能を表示するための制度が「保健機能食品」で、特定保健用食品(個別許可制)、機能性表示食品(届出制)、栄養機能食品(自己認証制)の3つがあります。

項目特定保健用食品機能性表示食品栄養機能食品
根拠健康増進法43条1項(特別用途表示の許可)、食品表示法食品表示法に基づく食品表示基準2条1項10号食品表示基準2条1項11号
手続消費者庁長官の許可。国が有効性・安全性を審査販売60日前までに消費者庁長官へ届出。国の審査はなく、科学的根拠の挙証責任は届出者届出・許可なし。基準に定められた栄養成分の機能を表示
科学的根拠最終製品を用いたヒト試験が必須最終製品のヒト試験、または最終製品・機能性関与成分の研究レビュー(システマティック・レビュー)国が定めた規格基準
疾病リスク低減表示可能(カルシウム・葉酸等)不可対象外
公定マークあり(許可マーク)なしなし
件数(2024年8月2日時点・消費者庁資料)許可1,039件届出6,890件―

栄養機能食品は決められた栄養成分の機能しか表示できないため、自社成分の機能を訴求したい事業者の選択肢は実務上トクホか機能性表示食品です。「国が審査しない」ことは「責任が軽い」ことではなく、根拠と品質の責任を届出者が全面的に負うことを意味します。

特定保健用食品(トクホ)― 許可制の仕組みと区分

健康増進法43条1項は、販売に供する食品に「特別の用途に適する旨の表示」をしようとする者は内閣総理大臣(権限は消費者庁長官に委任)の許可を受けなければならないと定め、特定保健用食品はこの特別用途表示の一区分です。申請には製品見本、商品名、原材料の配合割合、製造方法、成分分析表、表示内容等を記載した申請書を提出し(同条2項)、許可試験を経ます。安全性は食品安全委員会、有効性は消費者庁の部会で審議され、許可を受けると許可マークを付して販売できます。許可を受けずに特別用途表示をした場合は50万円以下の罰金です(72条2号)。

消費者庁の資料では、トクホは次の区分に分かれています。

  • 特定保健用食品:個別に審査を受けた通常の区分。
  • 疾病リスク低減表示:関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合の表示。現時点でカルシウム(骨粗鬆症)と葉酸(神経管閉鎖障害)が認められています。
  • 規格基準型:許可実績が十分で科学的根拠が蓄積された関与成分について規格基準を定め、消費者委員会・食品安全委員会の審査を省略して消費者庁が規格適合を審査する区分。
  • 条件付き特定保健用食品:有効性の科学的根拠が通常の水準に届かないものの一定の有効性が確認される食品について、限定的な科学的根拠である旨を表示することを条件に許可する区分。
  • 再許可等:既に許可を受けた製品について、許可を受けた者・商品名・風味などの軽微な変更をした区分。
ポイント

トクホは「国が審査した」という信頼を得られる一方、最終製品でのヒト試験が必須で許可までの期間と費用が大きくなります。疾病リスク低減表示をしたい場合はトクホしか選択肢がありません。

機能性表示食品 ― 届出制の仕組みと表示できる機能の範囲

食品表示基準2条1項10号は、機能性表示食品を「疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)を対象として、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品」と定義し、販売開始日の60日前までに消費者庁長官に届け出ていること、届出後も別表の遵守事項を守っていることを要件としています。

表現の範囲は、この定義と9条の表示禁止事項から導かれます。機能性表示食品について禁止されるのは、疾病の治療効果または予防効果を標ぼうする用語、届け出た機能性関与成分以外の成分を含むことを強調する用語、消費者庁長官の評価・許可等を受けたものと誤認させる用語、栄養機能食品で表示できる栄養成分の機能を示す用語です(9条1項8号)。表示できるのは「届け出た機能性関与成分による、健康な人の健康維持・増進に資する特定の保健の目的」に限られ、「血圧が高めの方の血圧を下げる」はできても「高血圧を改善する」は言えないという線引きです。

容器包装には、機能性表示食品である旨、届出番号、届け出た機能性、1日当たりの摂取目安量、摂取上の注意、「医薬品と異なり、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨」または医薬品ではない旨、疾病に罹患している者・未成年者・妊産婦・授乳婦に訴求したものではない旨、事業者の連絡先などを表示しなければなりません。2025年4月1日以降の届出からは表示方法・表示位置の見直しも適用されています。

届出の流れ ― 60日前・120日前と届出後の遵守事項

届出は消費者庁の届出データベースを通じて行います。届出事項は食品表示基準別表第26に定められ、安全性に係る事項、生産・製造および品質管理に係る事項、健康被害の情報収集体制、機能性に係る事項、表示に係る事項などの資料を提出します。

段階内容根拠・期限
準備機能性関与成分の特定、安全性の評価(食経験・既存情報・試験)、機能性の根拠(最終製品のヒト試験または研究レビュー)、生産・製造・品質管理体制、健康被害情報の収集体制(窓口・対応可能日時・フローチャート)の整備別表第26
届出販売開始日の60日前まで(行政機関の休日を除く)に消費者庁長官へ届出。届出のない機能性関与成分等で確認に特に時間を要すると消費者庁長官が認める場合は120日前まで。研究レビューは2025年4月以降の新規届出からPRISMA声明(2020)準拠食品表示基準2条1項10号イ
販売届出番号を付して販売。届出情報は消費者庁のウェブサイトで公開―
届出後別表第27の遵守事項(健康被害情報の収集と行政への提供、GMPに基づく製造管理、自己点検等報告など)を継続して遵守。期日までに自己点検等報告を提出しないと機能性表示食品の要件を欠く食品表示基準2条1項10号ロ・別表第27

自己点検等報告は、届出番号が付与された日から1年を経過する日までに1回目、以後は前回報告の翌月から1年以内に提出します。消費者庁は2026年6月の案内で同年3月31日が最初の報告期限であったとしており、期限管理を社内の年間スケジュールに組み込む必要があります。

2024年の制度見直し ― 健康被害報告・GMP要件化・表示の見直し

2024年3月に紅麹関連製品の健康被害が明らかになり、同年5月31日の関係閣僚会合で「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応」が取りまとめられました。これを受けて食品表示基準が2024年8月23日に改正・公布され、段階的に施行されています。

施行日内容届出者がすべきこと
2024年9月1日健康被害情報の収集体制と、医師の診断がある健康被害情報を因果関係が不明でも速やかに都道府県知事等と消費者庁長官へ提供する義務(食品表示基準の遵守事項・食品衛生法施行規則別表第17第9号ハ)窓口と評価・報告のフローを整備し、知った日から15日以内に提供。重篤事例(死亡、医師が重篤と判断した症例)は1例でも、非重篤でも概ね30日以内に同じ所見が複数発生すれば提供(令和6年8月23日健生食監発0823第3号)
2025年4月1日表示方法・表示位置の見直し、新規成分等に対する届出時の確認手続(60日・120日)、PRISMA2020準拠、自己点検等報告の運用開始新規届出は新様式・新データベースで。既存品も表示の切替えを確認
2026年9月1日天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品について、告示が定める製造または加工の基準(GMP)に基づく製造管理が完全施行(経過措置は2026年8月31日まで)自社・委託先の製造施設がGMPに基づく製造管理を実施しているかを届出者として確認し、記録を保存。消費者庁が2026年10月1日付で公表した届出者向け点検指針・点検表で確認

健康被害情報の提供義務は食品衛生法施行規則にも位置づけられ、違反すれば食品衛生法に基づく営業の禁止・停止の措置が可能とされています。特定保健用食品の許可を受けた者にも同様の提供が関係通知で求められています。製造を委託している届出者は、委託先のGMPに基づく製造管理の確認と、健康被害情報を委託先・販売先から自社に集約する契約上の仕組みの両方が必要です。

ポイント

見直し後の機能性表示食品は、「届け出たら終わり」の制度ではありません。健康被害報告(15日)、自己点検報告(年1回)、GMP確認の3つの期限を、法務・品質保証・お客様窓口が共有する運用に落とし込むことが要件維持の前提です。

広告での注意点と違反したときの措置

届出表示は容器包装への表示を規律するものですが、広告は別途、健康増進法65条(誇大表示の禁止)と景品表示法5条1号(優良誤認表示)の対象です。消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定)は、届出表示が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける」であるのに、表示全体から運動や食事制限なしに痩せられるかのような印象を与える広告や、届け出た機能性関与成分以外の成分を強調して機能性関与成分であるかのように見せる広告を問題例として挙げています。届出した機能性の文言をそのまま使うこと、対象者(健康な人)と摂取上の注意を広告でも省かないことが基本です。

  • 食品表示法:食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売は禁止(5条)。基準違反には消費者庁長官の指示(6条1項)と命令(同5項)があり、遵守事項を満たさなければ機能性表示食品として販売できなくなります。
  • 健康増進法:健康保持増進効果等の虚偽誇大表示は勧告・命令の対象(65条・66条)で、命令違反は6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(71条)です。
  • 景品表示法:優良誤認表示には措置命令と公表(7条)、売上額の3%の課徴金(8条)があり、根拠資料を提出できなければ優良誤認とみなされます(7条2項)。
  • 薬機法:届出表示を超えて疾病の治療・予防を標ぼうすれば、無承認医薬品の広告として68条の問題にもなります。

当事務所は、企業法務の弁護士チームに医師資格を持つ弁護士が加わり、機能性の根拠資料の読み方から広告表現、委託先との契約、健康被害発生時の初動まで一体で支援し、チャット・オンラインで全国の事業者に対応しています。

よくある質問(FAQ)

機能性表示食品とトクホは何が違うのですか?
トクホは健康増進法43条1項に基づき、国が最終製品のヒト試験等で有効性・安全性を審査して許可する制度で、許可マークと疾病リスク低減表示が認められます。機能性表示食品は食品表示基準に基づき、事業者が科学的根拠を自ら確認して販売60日前までに消費者庁長官へ届け出る制度で、国の審査はなく、根拠の挙証責任は届出者にあります。
機能性表示食品で「高血圧を改善」と書けますか?
書けません。機能性表示食品は疾病に罹患していない者を対象とし、疾病の治療効果・予防効果を標ぼうする用語は食品表示基準9条で禁止されています。「血圧が高めの方の血圧を下げる機能」のように、健康な人の健康維持・増進の範囲で届け出た文言を使います。
GMPに基づく製造管理はどの商品が対象ですか?
天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等の加工食品(サプリメント形状の食品)として届け出た機能性表示食品が対象で、告示が定める製造または加工の基準に基づく製造管理が遵守事項とされました。経過措置期間は2026年8月31日で終了し、同年9月1日から完全施行されています。製造を委託している場合も、届出者が委託先の実施状況を確認する責任を負います。
健康被害の情報はどのような場合に、いつまでに報告する必要がありますか?
医師の診断がある健康被害情報を把握した場合、製品との因果関係が不明でも、都道府県知事等と消費者庁長官に提供する義務があります。期限は知った日から15日以内で、死亡や医師が重篤と判断した症例は1例でも、非重篤でも概ね30日以内に同じ所見の症例が複数発生した場合は提供が必要です(令和6年8月23日付厚生労働省通知)。
自己点検等報告を期限までに提出しないとどうなりますか?
自己点検等報告は食品表示基準の遵守事項であり、期日までに提出がない届出は機能性表示食品としての要件を欠くこととなります。1回目は届出番号付与日から1年以内、2回目以降は前回報告月の末日の翌日から1年以内が期限です。

まとめ

  • 身体の機能を表示できるのは保健機能食品のみ。トクホは国の審査を受ける許可制、機能性表示食品は事業者責任の届出制で、疾病リスク低減表示はトクホだけに認められる
  • 機能性表示食品は健康な人を対象に、届け出た機能性関与成分による保健の目的のみ表示でき、疾病の治療・予防の標ぼうや届出成分以外の強調は禁止
  • 届出は販売60日前(新規成分等は120日前)まで。届出後も別表第27の遵守事項を守り続けることが要件
  • 2024年の見直しで、健康被害情報の15日以内の提供(2024年9月)、表示の見直し・自己点検報告(2025年4月)、GMPに基づく製造管理(2026年9月完全施行)が要件化された
  • 広告は健康増進法・景品表示法で別途規律され、届け出た文言と対象者・注意事項を維持する

見直し後の制度は、届出時の資料の質と、届出後の期限管理の両方で事業者の責任が重くなっています。商品開発から販売後の体制づくりまで継続して相談したい事業者には顧問弁護士サービスを、届出資料の確認や健康被害発生時の対応など個別のご相談はお問い合わせ(無料相談)をご利用ください。化粧品・健康食品分野の他の記事は分野別ページから、広告規制全般は同事務所運営の企業法務メディアの記事広告・表示規制の基本 ― 景品表示法(優良誤認・有利誤認・ステマ規制)・特定商取引法の最終確認画面・薬機法のNG表現をご参照ください。

参考(一次情報)
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この記事の執筆者
弁護士・医師 澄川 淳矢弁護士法人 越水法律事務所 弁護士・医師(第一東京弁護士会)

京都大学医学部卒業、倉敷中央病院での初期研修を修了した医師であり、弁護士。医療現場での経験を背景に、病院・クリニック・介護事業者・医薬品・医療機器・ヘルステック企業の法務について、医療の実態を踏まえた実践的な助言を行う。

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越水 遥
この記事の監修者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。医療機関・ヘルスケア企業の顧問として、経営の視点を踏まえた法務支援を行う。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言・医学的助言ではありません。法令・制度・通知の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令・通知をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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